第十三章 写真の話


ホラーではないのだが。


小学校低学年の頃、家のタンスの引き出しをあけて、写真を見てたら、一枚の写真に、んっ?となり、手を止めた。


そこには、三歳ぐらいの女の子が写っていて、可愛い着物を着て、にっこりと笑っていた。


見た事もない女の子に、写真を持って母の元へ行き、


「この子、だぁーれ?」


と尋ねたら、写真を見た母の顔色が変わって、私のてから写真を取り上げると、ビリビリに破いて、ゴミ箱に捨ててしまった。


なんだか、その時の母の様子に、それ以上、何も聞けなくなった。


もしかしたら、父の浮気相手の子供かしら?とか思ったけれど、父は、浮気をするような人ではない。



その後、何日か経ち、写真の事なんて、忘れてたけれど、母と買い物に行った時、一人の少女がタタタと走ってきて、全身を包帯でグルグルと巻かれ、真っ赤な目で、母を睨みつけ、


「破くなんて、酷いじゃないか!」


と怒鳴った。その声は、とても少女とは思えない、低く掠れた声で、まるで、男のようだった。


「今度は、破かないでね。」


そう言って、母の手に写真を渡してきた少女は、先程と違い、愛らしい顔をしていた。


「あの子、だぁーれ?」


私が聞くと、母は、声を震わせ、こう言った。


「知らないの…いきなり、写真を渡してきて。何度も捨てるけれど、また写真を持ってくるのよ…何度も…何度も……。」




知らない女の子から写真を渡されても、受け取ってはいけない……らしい話。






ー第十三章 写真の話【完】ー

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