第49話 花火大会で浴衣姿なんか見せられた日にゃそれはもう
日曜日、花火大会当日
空が赤くなる少し前、オレたちは屋形船の前でディメコネの皆様を迎えるべくスタンバっていた
「あめちゃんまだかな〜♪あめちゃんまだかな〜♪あめちゃぁぁ〜ん♪今日はどんなあめちゃんなめてるのかなぁ〜♪」
隣の課長が小声でオリジナルソングを歌いながらソワソワしている
「待ち遠しいですね」
「それなっ!!」
ビシッと指をさされる
他人に指を差したらいけません
「しっかりしてくださいよ、失礼のないように頼みますわぁ、、」
「もちのロンだよ!Kanonちゃん!」
今度はのんちゃんを指差す課長
「、、うざっ、、」
最近なんの敬(うやま)いもないのんちゃん、その人、一応上司ですよ?
3人でざわざわしてると、向こうから4人の女性が歩いてきた
「ちゅっぱっ、、
こんちわ、ちわっす〜
あらあらパイセン、かのちん、結木っち」
「お誘いありがとうございます、お久しぶりです」
浴衣に身を包んだ美少女が2人、あらわれた
「あめちゃん!!あぁ!!なんて可愛いんでしょう!!
YU⭐︎KA⭐︎TA⭐︎
似合いすぎて!!
あぁ!あめちゃん!!
会いたかったです!!」
課長がスーパーオーバーリアクションでクネクネしてる
「あいかわらずキモいっすね」
「ありがとうございます!!
もっとお願いします!!」
「、、、」
スーツ姿の佐々木マネージャーはなにも言わない
おそらく、あめちゃんと同じことを思っているだろう
「お招きありがとうございます、今日ってお酒飲んでもいいですよねぇ〜?」
こちらもスーツの島野マネージャーから質問される
「え?えぇ、、未成年に飲ませなければ大丈夫ですよ」
「そんなことしませんよぉ〜、ねぇ〜ことちゃ〜ん」
「島野さん、もしかしてもう酔ってますか?私のマネージャーなんですからしっかりしてください」
「え〜?さっきコンビニで一杯キメてきてなんてないですよ〜?」
「、、私のマネージャーがすみません」
「いえいえ、こと様も来ていただいてありがとうございます
浴衣すごく似合ってます、可愛いです」
「、、ありがとうございます、でも、すぐそういうこと言うのやめて下さい」
「あら〜?あらあら〜?
すぐ?すぐってなんですかぁ〜?もしかして、何回も可愛いって言われたんですか〜?
新井さん、うちのアイドルに手を出してやがるんですか?
ころしましょうか?」
「滅相もございません、私がこと様に近づくなど恐れ多く、、、」
目が座っている、、こわい、、
「島野さん!もういいですから!行きますよ!」
「あ!こちらの船です!お気をつけてどうぞ!」
2人を屋形船に案内した
こと様を横目で見る
紺色の浴衣に青い紫陽花が描かれていて、こと様の黒いロングヘアもあいまって、The日本美人という感じだ
「、、なんですか?」
「あ、、いえ、すみません、ジロジロみて」
「、、、」
ジト目のこと様から逃げるように陸地に戻る
「パイセーン、わたしの浴衣の感想は〜?」
「えっと、、
ミニスカの浴衣とか初めてみたけど、あめちゃんだと着こなせるんだね
うん、あめちゃんらしくて元気な感じで似合ってる、可愛い」
あめちゃんは、紫ベースのお花が散りばめられたミニスカ浴衣を着ていた、袖はかなり広がっていて、ところどころフリルが付いている
浴衣、というよりは、浴衣風のアイドル衣装、と言われた方がしっくりくるような服装だ
「そうっすか〜?なら、もっとじっくり見ていいっすよ〜」
あめちゃんがくるっと回転する
すると、、スカートがめくれて、、
ギリギリ見えなかった、、
「どうすか?」
「、、う、うん、いいと思う」
「ふ〜ん?見えました?」
「なにが?」
「そっすか、パイセン」
こっちに来いと手招きされたので、耳を近づける
「どこ見てるんすか?えっち」
耳元でえろい声を出される
「、、、」
黙って顔を離す
「あれ?今日は動じないっすね?」
「大人だからね、、」
危なかった、、このクソガキ早くなんとかしないと、、
「ちぇ〜、素直になったら、見せてあげたのに」
マジで!?
声には出さない、脳内に留める
「、、、そうすか、なるほど」
ニヤニヤとオレを見る
あれ?口には出してないはずなのだが
「ま、満足したので、わたしも先に乗ってま〜す」
あめちゃんは、屋形船につづく桟橋を1人で歩いていく
その後ろに佐々木マネージャーが続く
「、、、」
オレとすれ違うとき、なんか睨まれたような気がした、、
こわい、、
「ふ、ふぅ、、
ひまちゃんまだかな〜♪まだかなまだかな〜♪」
「そういえば、新井くんは今日ひまちゃんと初対面だよね!
緊張してないかい!?
してるよね!
頑張って!!」
あ、そういえば、そういう設定でしたっけ
演技する準備してなかった
あぶないあぶない
「そうですね、緊張してます
でも、大丈夫です
何度もシミュレートしたので」
「そうは言っても推しとの初対面はすごいんだよ!!
それはもうね!!」
それなっ!!
とは言えず、あはは、と頷く
すると、向こうの人混みから、一際目立つ可愛い女の子がやってきた
輝いて見える
その子は、白ベースに黄色いひまわりがたくさん描かれている浴衣を着ていた
カーキの帯を巻いて、髪型は浴衣に合うように纏められている
いつも横髪から垂れている白黒の三つ編みが今日はサイドに張り付いて後ろの方に回り込んでいる
大人っぽい髪型だった
その髪には、白い花飾りが付いている
そんな理想の女の子は、カラカラを小気味いい下駄を鳴らしながら、オレの前に立ち止まった
「あ、あの、わたし、、」
「す!すごく!綺麗です!!」
ひまちゃんが何か言う前に、つい口から言葉が飛び出した
ひまちゃんは驚いた顔をしたあと、控えめな笑顔を返してくれて、髪をかき上げながら返事をしてくれる
「あ、、えっと、、ありがとう、、ございます、、
えへへ、、」
ひまちゃんは、ちゃんと演技しようとしてる
でも、オレはうまく出来ない
ごめん、でも、すごく綺麗で、、
「あー!新井くん!!
大丈夫かな!
は、はじめまして!夢味製菓の結木と申します!
あの!花咲さんでよろしいでしょうか?」
「あ、はい、花咲ひまわりです
お世話になります」
「お世話になっております!
こちらにどうぞ!
いやー!すみませんね!彼は花咲さんの大ファンでして!」
課長がひまちゃんと飯塚マネージャーを屋形船に案内してくれた
オレはその場に固まったままであった
「アホ、、」
のんちゃんのそんな言葉だけが、オレの耳には聞こえてきた
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