2章 幼馴染をVTuberにプロデュース

第13話 趣味が高じて

【筆者メモ:改稿中:1章まで完了】



(ニコニコ)


「、、、あー新井くん?」


「はい!(ニコニコ)」


「あー、体調の方はどうだい?」


「体調ですか!元気満タンです!(ニコニコ)」


「、、、そうかい、、なら良かったんだが

あー、、こんなことを聞くのもプライバシー的にどうかと思うんだが、休日なんか良いことでも、、

いや良いことあったんだな、うん、わかった

先週も聞いたが、仕事はつらくないかい?」


「はい!ヤル気MAXです!(ニコニコ)」


「、、そうか、なら良いだろう」

先輩はやや引き攣った顔をしていた

もしかしたら、やや、ではなかったかもしれない

ひくひく

という擬音が聞こえてきそうな顔だ


まぁそれもそうだろう

先週末は死にそうな顔をしていた部下が週明け突然元気100倍、いままでに見たことないような上機嫌で出社してきたのだ

そういう顔にもなるだろう

体調が悪いままなら、仕事を引き継ぐとまで言ってもらっていたのに申し訳ないことである


でも!

申し訳ないと思っていても!

オレの笑顔が崩れることはなかった!

だって、世の中はこんなにキラキラしていて素晴らしいんだもの!

笑顔にもなるよね!


実にハッピーな脳みそである

オレは昨日の夜のことをなんども、なんどもなんどもなんども、思い出していた

思い出すたびに恥ずかしい気持ちになって、嬉しい気持ちになって、ドキドキ、ワクワクして、笑顔になってしまう


だって!

あの憧れの!だいすきな!

ずっとファンの!

ひまちゃんと!

ひまちゃんとー!

ほにゃららをしてしまったのだ!

そりゃ笑顔にもなるさ!


昨日の公園でのことはただの事故だってわかってる

でもさぁ男なんだもん

好きな子とあんなことしたら、こうなっちゃうでしょ!

恋愛経験だってないんだしさ!


あのあと、オレは地面から立ち上がり、自分に何が起きたかを反芻した


ひまちゃんがオレの手紙を読んでくれてすごい嬉しかった、助けられたって言ってくれた

そんな言葉を聞いて安心したオレは2徹明けの眠気が突如限界になり、倒れるように寝てしまった

次に目を覚ましたら、ひまちゃんが泣いているように見えた

そう認識した瞬間飛び起きたところ、、、


ひまちゃんと、、


ちゅーをしていたのだ、、


、、またムズムズしてきた


この反芻を昨日からなんども繰り返している

さすがに家に着いたら泥のように眠りに落ちたが、起きてからも夢じゃないことを確認するために、なんども思い出に浸っていた


なので、今のオレは無敵である

仕事もいつもの3倍の早さでこなしちゃうね

ついてこれるならついておいで?

ムダだと思うがね


そんなハッピーな状態で仕事に取り組んでいると、部長から声をかけられた


「新井くん、少し時間大丈夫?」


「?はい?なんでしょう?」

普段接しない人から声をかけられ、冷静に対応できた


「ちょっとこのあとの会議に新井くんもでて欲しいんだけど、いいかな?」


「あーはい、今日の午前中はもう打合せないので、大丈夫です」

PCの予定表を見ながら答える


「ありがとう

じゃあ、10:30に302会議室に来てください」


「はい、わかりました」


なんだろう?

部長とは普段ほとんど話す機会がない

正直、印鑑押す人、くらいの認識だった


「、、、あ!」

も、もしかして、今月の勤務態度のことで怒られるのだろうか、、、

なにか知ってないだろうか?

という思いで先輩の方を見てみると

先輩は肩をすくめて、なんだろうな?と言いたげな顔をしていた



コンコンコンッ


「はーい、どうぞー!」


「失礼します!」

今更どうにもならないかもしれないが、元気よく、礼儀正しくを意識して入室する


「急に呼び出して悪かったね!

ちょっと新井くんにお願いしたいことがあってね!」

部長の声のトーンがさっきまでより高い気がする


「いえいえ!大丈夫です!」

とりあえず元気に返答しておく


「そう言ってくれると助かるよ!

今回は、社長から直々のお呼び出しだったから、急になってしまったが、やる気があるようで結構!」


、、、社長?

そう思い目を泳がすと会議室の一番上座、そこに社長が腰掛けていた


「、、、」

オレのことをじっと見つめている


なんで社長?

どう答えればいいかわからず、返答に迷っていると


「あぁ!そうだよね!

急に社長が出席されている会議に呼ばれたらビックリするよね!

ごめんごめん!

いやー、実はさ!この前の企画会議のときに新井くんがVTuberとのコラボを提案してくれたじゃない?

その件で社長からお話があるらしくて!」


おぉ!もしかして、オレの企画を実は社長が気に入ってくれて、直々に企画OKのお言葉をいただけるとか!?

いやいや、そんな美味い話あるのか?

、、プレゼンがあまりに酷かったから、それを問い詰められるとか、そんなオチじゃなかろうな、、


「新井くん」


「は、はい!」


社長はゆっくりした口調で話し出す


「キミはVTuberに詳しいのかい?」


「は、はい!詳しいといいますか!

以前、好きになるキッカケがありまして!

それから動画視聴が趣味になり自然と詳しくなったというのが現状です!

なので今流行っている子のことはだいたい把握しております!」


突然話しかけられた会社のトップに対して、聞かれてもいないことを答えてしまう


「そうか

今もうちの会社でコラボしたいと思っているかい?」


「!!

はい!当社に必ずメリットがあると考えています!

やらせてください!!」

任せると言われてもいないのに、その気になって答える


「ふむ、実はね

今、うちの会社に新しいマスコットキャラを作ろうという動きがあるんだよ」


急に話がそれた


「それで、いままでのような ゆるキャラを作る案が大半の中、これでいいのだろうか、と悩むようになってね」


へー偉い人も悩んだりするんだな


「そんな中、親戚が集まる催しで、孫や子供たちがこぞってVTuberの話をしていたんだ

わたしには最初なんのことか全くわからなかったが、孫たちが一生懸命動画を見せてくれたことで、少しずつ理解はできたよ

もちろん、それから勉強もした」


社長はそのときのことを思い出しているのか、すこし柔らかい口調で話す


「そこで、わたしは思ったんだよ

いままでと同じことをやって、そこそこの成果を得るくらいなら、

今一番流行っているものに挑戦して失敗でも成功でも受け入れようじゃないか、とね」


立派なことである

うちの会社は保守的なイメージだったが、社長はちがうらしい


「それで、近々、新しい部署を立ち上げようと思う」


「新しい部署ですか?」

ここでやっと口を挟むことができた


「そう、VTuberを企画・運営する部署だ」


?なんだ、その部署?


「まだ、こちらも手探りだが、うちのグループはお菓子以外にも子供向けのオモチャなどを取り扱っている

動画配信で宣伝するネタには困らないのではないかと考えている

うちだけでなく、グループ代表として売り出していく計画だ」


「は、はぁ、たしかに、そうですね?」

たしかに、お菓子やオモチャを紹介するYouTuberはたくさんいる

でも、VTuberにはそれを専門にしている人はいないような気がする

んー、でも企業系VTuberとして、配信頻度もそこまで高くないならアリかもしれないな?

そこまで考えて社長にこう言われた


「そこで、新井くんには、その新しい部署に異動してもらいたい」


移動してもらいたい?

引っ越しでも手伝えというのだろうか?

いどう、、異動?


「え、それは今の仕事でわたしがなにか失敗をしてしまったからでしょうか、、」

そうとしか思えずネガティブな質問をしてしまった


「いや、そうじゃない

キミはVTuberに精通しているようだし、熱意もある

好きだという気持ちがよく伝わってきたんだよ、あのプレゼンでね

だから、あのプレゼンを聞いて、キミが適任だと感じたんだ」


、、、プレゼンが終わって退室するとき、社長と目が合ったような気がしていた

でも、それは気のせいじゃなかったらしい

社長はしっかりオレのプレゼンを聞いてくれていたのだ


「そ、それはとても有難いお言葉です、、

しかし、今の仕事をやりきってからでないと、先輩方にご迷惑をおかけしてしまいます、、」

実際にとても嬉しかった

しかし、現実的な問題も瞬時に思いつく

今の仕事もそれなりのモチベはあるのだ

途中では投げ出せない


「もちろん、しっかり引き継いでくれてからで構わない

やってくれないか?」


正直、オレの気持ちはとっくに決まっていた

どんな仕事をするのか検討もつかない

オレがなにができるかもわからないし、なんの自信もない

でも、さっきからずっとワクワクしている

会社でこんな気持ちになるなんて思いもしなかった


「、、、はい!わかりました!

お任せ下さい!精一杯がんばります!」


「そうか、ありがとう

では、辞令は追って発表する」


「はい!

、、、」


「新井くん、ありがとうね!

じゃあ、今日はもう大丈夫だから!」

部長にそう言われ退室を促されていることに気づく


「はい!それでは失礼します!」


「ふぅ、、」


オレは興奮を抑えながら廊下を歩く

まさか、自分がVTuberに関わる仕事につけるなんて思ってもみなかった

自社製品とのコラボを夢見ていたが、自社でVTuberをプロデュースすることになるなんて驚きだ

そこに自分が抜擢されたことにも驚いている


でも、そんな驚きよりも、どんな動画を作ろう、どんな配信をしてもらおう、というワクワクが優っていた

考えを巡らせているうちに自席に帰ってくる


「おっ、新井くん、部長なんだった?」


「あっ、、先輩、実は、、」


先輩に声をかけられてオレはクールダウンする

部署異動するということは、ずっと良くしてくれていたこの人とも離れることになるのだ

オレは順を追って先輩に事の顛末を話し始めた

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