僕の名前は大西晃生

清水 惺

第1話

 僕の名前は大西晃生。

 いま、病院のベッドで天井を見つめてる。

 他にやることもなく、気力もない。

 少し動けばバネの軋む音のするベッドでただじっとするだけ。

 ある日突然、事故で右足とお別れすることになったら、きっと誰でもこうなる。

 昨日、大学から帰る途中、いきなり意識が途絶えたかと思えば気づいたらここにいて、膝から下が綺麗に無くなってた。

 手の施しようが無かったらしい。でも簡単に受け入れられる訳がない。

 申し訳なさそうな顔をしながらそう伝えてきた医者に怒りをぶつけてやろうと思った。命の恩人なんて知ったことか。

 でも、できなかった。

 僕にできたのは、ただ声にならない声を喚きながら情けなく泣き続けることだけ。

 そんな僕の姿を隣で見て、既に一度泣き腫らしたんだろう赤い目をした母が、もう一度一緒に泣いてくれた。

 小さい頃に「泣くな」と何度も僕に怒った父も、気づけば頬に涙の痕があった。父の涙なんて、祖母が亡くなった時以来だ。

 兄は……まあ気の毒そうな顔してた。

 この人達を悲しませたくはない。

 でも、もう自由に立って歩けない。

 まともな生活も送れない。

 その事実が僕を打ちのめす。

 死ななくて良かった、死ぬよりましだって大抵の人は言うだろう。

 そりゃ、そうだ。

 そりゃ、そうだろうけど。それにしたってあんまりじゃないか。

 いつになったら気が済むだろうか。

 立ち直る時なんて、永遠に来ないんじゃなかろうか。

 考えるのも面倒くさい。

 今は白い天井をただ眺めてる。



 

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僕の名前は大西晃生 清水 惺 @Amenoyasukawa

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