敵わないな

鈴乱

第1話


敵わねぇな、と思う。


いくつ歳をとっても、親ってやつには敵わねぇ。


何でこんな人間にも気を遣ったり、優しくしようとしたりすんだ?


ひでぇ事しか、してこなかったぞ。俺ぁ。


家族が大変な時に、ひとり逃げ出した。


支え合う、ってのが何だか分からなかった。

どっかの国の、どっかのおとぎ話かなんかだと思っていたよ。


俺が逃げ出した後も、現実は続いていて、あいつらはそこで立ち向かってた。

俺は……、よそにいて……何もしてこなかったじゃねぇか。


心配なんて……しなくていいんだぜ?

俺がどこで何をしていようが、たとえどこかで野垂れ死んだって……気にしなくていい。だって、それがな……それが、俺が選んだ人生なんだよ。


受け入れてくれなくても、良かったんだぞ……。

俺のせいで、お前らが迷惑や被害受けるかも知んねぇんだぞ?


それなのに、なんでこんなろくでなしを受け入れるんだよ。


馬鹿が……。馬鹿がよぉ……。


俺は、本当は……お前らを潰そうと思った。恨んでたんだ。


でも……、そんな態度取られたら……できねぇ。

できるわけねぇ。


ちくしょう。

なんもかんも上手くいかねぇよ。


どうしたらいいんだ。


どうしたら、あんたらを救ってやれるんだ?


今までのツケを返せるって言うんだよ……。


なぁ、教えてくれ。

俺はどうしたら、お前らの役に立てる?

どうしたら、お前らを、助けてやれるんだ?

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