第51話 魔物の襲撃
そして、今日は国境に魔物の大群が攻めてきたという事で剣聖と一緒にその場所に向かって行く。
場所はここから馬車で四十分程度で行ける。
そこに入る魔物はかなり強いという事だ。銀郎兄弟との戦いを除いたら剣聖たちの訓練を受け始めてからは初の実践だ。この、今のユウナの実力がどれくらい通じるのか……そう言う話だ。
銀郎兄弟はユウナに比べてそこまで強くなかった。さて、今日はどれくらい戦えるのか。
今日の戦場はわざわざ剣聖がわざわざ自ら赴く必要のある戦場、つまりゲルドグリスティがいる可能性もある。
戦地、あの日以来だ。どきどきと同時に力を使えるというわくわくもある。
ユウナは早速、歩いて、その場に行く。そこには沢山の兵士たちがいて、そこにいた剣聖に頭を下げた。
その光景は圧巻で、ユウナとミコトは思わずそれを見つめていた。
「おい」
アトランタがユウナに話しかける。
「ぼっとしてるんじゃねえよ。お前はあっちだ」
「うん」
アトランタに促されるままに、ユウナは持ち場へ行こうとする。そう、魔法部隊の場所へと。ミコトも「え、ええ」と、慌てたようにユウナについて行く。
だが、それを剣聖は止める。
「なんで?」
「お前はラトスと一緒に俺と行動してほしい」
そう言われたユウナはラトスの顔を見る。
「本来なら、お前は今回は一兵卒として参加することになるんだが、今回は私の側近としてやってもらおう」
そう言われて、思わずユウナはドキッとした。だが、ユウナは笑顔で「うん」と答える。
「えっと、私は?」
ユウナと一緒に行動してたミコトはきょんとした顔で、剣聖に訊く。
「まあ、お前もユウナについてきた方がいいな。じゃあ、こちらに」
「うん」
そしてユウナとミコトは、剣聖について行く。
「お前はあっちだろ」
そうラトスに言われたアトランタは、はっとなって自分の持ち場に行く。
そしてユウナたちが持ち場に着いた時に、魔物の姿が見えた。その数、軽く見ただけでも一万を優に超えている。
これは乱戦になる。
あの時みたいに。
そして、魔物達の群れに、魔法部隊が一気に魔法を投ずる。
その魔法でまものがどんどん、どんどんと殺されていく。
だが、それでもひるむことなく向かってくる魔物達が、魔法を潜り抜けて、兵士たちにぶつかっていく。
「かかれー!」
ケンセイの命令により、兵士たちが魔物にぶつかtぅて行く。
そのまま兵士がどんどんどんどんとぶつかっており、早速戦場は荒れたものとなる。
そんな時ユウナとミコトはというと、まだ本陣で待機していた。
「ねえ、まだ出ないの?」
ユウナは二人に訊く。こんな乱戦になってるのに、自分たちが出ないなんて、そんなのつまらない。
「馬鹿か、ああいう統制された動きから見るに、こういうのは向こうも大将を置いてるんだ。例えばあのゲルトグリスティとかな」
そうラトスが馬鹿にするように言う。
「馬鹿かって、失礼じゃない?」
ユウナは座ってた椅子から立ち上がる。
「落ち着いてよお姉ちゃん。ラトスさんの言う通りだよ」
ミコトはそんなユウナの手を触りそう言った。
実際、ユウナとラトスのどちらがより知識を持っているかと言われたら、絶対に後者だ。
ミコトもラトスのことが好きという訳ではないが、ここは絶対にラトスの言葉に従った方がいい。
「分かったよ」
そう言ってユウナは椅子に座りなおす。ユウナ自身も、異世界のアニメなどではそんな戦略を見たことがある。大将は後ろでどんと構えると言ったような。
「まあ、敵の主力が出るまで待つことだな」
「……うん」
そしてユウナたちが間tぅている間、前線では、たくさんの兵士がぶつかっていた。
そんな中アトランタは、前線に立ち、魔物達を倒していく。
沢山のジャガー、ゴブリン、コボルトなどなど大勢の魔物だ。
損な魔物達が向かってくる。その魔物の多さにより、どんどんと見方がやられていく。どんどんと兵士、部下の死体が転がっていく。その光景に、少しずつ精神がつぶれていく。
アトランタの目の前で、人が死んでいく光景に、
(くそ、無力だ)
そう、アトランタが思った、その瞬間も死んでいく。
だが、敵の魔物の数が減らない。
その数が減らないことにイライラしてきた。
ああ、もうだめだ。
そんな時だった。
「待たせたな」
そう言って目の前の男は魔物を切り刻んだ。
「なんであなたがここにいるんすか」
アトランタは、驚愕の表情をしながら言う。「アーノルドさん」
そう、そこにいたのはアーノルドだった。今ここにいるはずがない。だって、昨日まで国の反対側の国境にいたのだから。
そしてここに魔物が襲撃体勢に入ったのは、今日の朝、そう。ここにいる訳がないのだ。
「勘だ。俺の勘はよく当たるからな。……ここには誰がいる?」
「剣聖とラトスですね。後は、フルスランもいます」
フルスランとは剣聖軍の軍隊長の一人だ。
「分かった。ケンセイに伝えといてくれ、このアーノルド様が来たってな」
「はい!」
そして、アトランタは部下の一人に命令して、剣聖に伝えるように指示を出す。
「さてと、俺はこの魔物相手に大暴れしてやるとするか!」
そう意気込んだアトランタは、目の前の魔物達に向かって突撃をし始めた。
「そうか、アーノルドがこちらに来たか」
「あの人が来たの?」
その発言を訊いたユウナが目を輝かせて聞く。
「アーノルドって?」
それに対してユウナの隣にいたミコトがひしぎそうな顔でそう訊く。
「アーノルドさんは、戦場で私を助けてくれた人だよ。すごく強かった」
「へー」
「という訳だ。ラトス、お前はアーノルドの助けにはいれ。後は、これはやはりきな臭い」
「きな臭い?」
ユウナが訊く。
「ああ、いくら何でも、攻めが単調すぎる。何か裏があるんじゃないか。私にはそう思えてならない」
「流石に考えすぎでしょ」
「そうだといいけどな」
そう言って剣聖は、髪の毛をポリポリとかく。
流石に考えすぎにも思えない。
城はロランが守ってるから大丈夫。となれば反対側から攻めてくる?
それも、アーノルドが抜けたとはいえ、十分な戦力があるから大丈夫……なはずだ。
だが、何か引っかかる。
そう、何かが。
そしてラトスが攻めに行った。ある伝言を頼んで。
そして伝言篝はすぐに帰ってきた。ケンセイはラトスに、前線の状況を教えて欲しいと頼んだのだった。
それは、前線に強い魔物や、ゲルドグリスティが来てないかを調べるためだ。
だが、その情報によると、ゲルドグリスティは来ていないし、強い魔物も出ていないようだった。流石に時間稼ぎが目に見える。
「ユウナ、ミコト。出るぞ。速攻で敵をせん滅する」
それを訊いたユウナは待ってましたとでもいうかのように。
「よっしゃ! やーるーーぞーー!!」
と、無邪気に言った。
「お姉ちゃん無茶はしないでね」
「大丈夫。何かあったらミコトが直してくれるし」
「そう言う話してないけど……」
ミコトはあきれたようにそう言った。
「来たぞ。戦況は?」
「以前こちら有利だ。だけど、やっぱりアーノルドさんが来てから余裕過ぎる」
そのアトランタの言葉を聞いて、ユウナは前線の方を見る。
魔物の攻めが小出しになっている。
「やっぱり時間稼ぎ何だね」
「そうだな」
アトランタがユウナの言葉を肯定する。
「だが。急に攻撃してくるかもしれん。気を付けろよ。そしてこれから、こっちが攻め込む番だ。本陣の敵を殺す」
「うん!」
そしてユウナ、ラトス、剣聖、ミコトの四人と、一兵卒およそ1000が攻めに行く。
敵の本陣へと。
「うおおおお!!!」
ラトスがまず前線の魔物をその持ち前の筋力でぶちかまし、道を切り開く。その道に向かい、ユウナはでかい火の玉を作り出し、投げ込む。その球が爆発し、剣聖が中にどんどんと入っていく。
そしてミコトは剣聖に強化魔法をかける。
「助かった」
そう、剣聖が言うと同時に剣性の剣のスピードが上がる。
そのラトスが剣で切り開き、剣聖率いる剣士が中に入っていく。その連携は見事なもので、どんどんと中が入っていく。ミコトも剣聖の能力強化をしている以上、近くにいないといけないので、ユウナの護衛の下、中に入っていく。……流石に最前線は戦いが激しいので、後衛に近い場所だが。
とはいえ、いくら後ろでも今は敵陣に斬り込んでいるいるという形になる。やはり魔物は多く、危険が伴っている。
だが、その瞬間、アーノルドもまた別の場所で斬り込んだ。剣聖軍が斬り込んだから、攻めが止んだから、その隙に斬り込んだという訳だ。
だが、妙だ。
向かってくるというよりは、撤退していく。
犠牲をこれ以上出したくない様子だ。
剣聖や、アーノルドが向かってきたから、急に撤退した。いや、損案訳がない。他に理由があるはずだ。そう、剣聖は考えた。
どちみち、こんな撤退中心の軍相手を短時間で壊滅させるなど不可能だ。
となれば……
「撤退するぞ」
そう、剣聖が言った。
「ええ、ここからか?」
ラトスが分かりやすく動揺する。
「国内が危ない。現に見ろ、アーノルドは撤退し始めている。これは囮だ」
「囮!?」
「国内に魔物を放っているのかもしれない。ともかく危険だ。帰るぞ」
「へいへい」
そして、剣聖の軍は引き返していく。
だが、あまりにも兵の数を減らし過ぎてはいけないという事で、ラトスとアトランタは戦場に置いていくことにした。
これで、すぐに崩れることはないだろう。
そして、剣聖、ユウナ、ミコト、アーノルドの四人は城に急いで戻る。
情報を知るために。
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