ガーネット王妃は生きている。

第1話

私は心臓外科医である。名前はフィオナ。

そんな私は今、古代人ガーネット王妃の遺体を見ている。


その遺体は何千年と年月が経っているが腐敗(ミイラ化)することが無く、まるで眠ったまま生きている人間そのものような姿であった。


超古代の時代を生きてきたにしては綺麗過ぎる。綺麗なまま寿命を迎えたのだろう。


そこで法医学者の田端守先生と一緒にガーネット王妃の遺体を調べた。


まず、ガーネット王妃の胸部に心エコーをかけた。遺体であるにも関わらず心臓が動いている。


健康な大人の心臓と同じなのだが一回り大きいそれも両手で持てるサイズだが、至って健康な心臓である。


そこで私はガーネット王妃に麻酔薬を施し人工呼吸器を付けて胸を開いた。すると、そこには信じられない光景が広がっていたのだ。


なんと、ガーネット王妃の体内の新鮮な赤。しかもこの血の色、真っ赤と言うより朱と言うより赤で光に照らされてサーモンレッドに輝いている。


大きな心臓は両手で持てるサイズ。鶏のささみみたいに揉みごたえのある筋肉質で至って健康で薄橙色に輝く綺麗な心臓であった。


「先生、これは凄いわ」


「うん、こんな心臓は見たことない」


ガーネット王妃の心臓をまじまじと見ていたその時である。私はガーネット王妃の爪が伸びていることに気づいた。この爪の長さからすると恐らく死んだ後で伸ばしたのであろう。そして、更によく見ると体内の血液や心臓と言った臓器がまだ生暖かい。


もしかしたらまだ死後数分しか経っていないのかもしれないと思った矢先。突然、私は目眩に襲われ倒れたのである。

次に目を覚ました時は病院のベットの上だった。隣には同僚の日本人医師の椿が私の手を握っている。


「先生、大丈夫ですか」


「私は一体……」


「先生は突然倒れたんですよ。心配しましたわ」


「そうか、ありがとう。ところで椿くん、ガーネット王妃は死んだのは何時頃か分かった?」


「はい、先生の心エコーで確認致しましたが、ガーネット王妃の死体が発見されたのは今から1万年以上前です。しかしですね、その死後数時間しか経っていないのです」


「何?だって……さっき見たのは超古代の時代を生きたガーネット王妃の死体よ?何千年経っているはずなのに…何故?」


「先生、ガーネット王妃はそもそも生きていたのです」


「まさか!」


「はい。私は倒れた先生と救急車を呼んでいた最中、ちょうどこの病院に来ていた医師達の話を立ち聞きしました」


医師達は私達が気を失っている間にガーネット王妃の心臓に耳を当てていたらしい。その彼らの話しを聞くと……なんと、ガーネット王妃の心臓がまだ動いていると言うのだ。そして……彼女の声を聞いたというのだ。生きているかのような声だったと。更に彼女は死んだかのように見えたが、実は心臓が動いているから生きていたと言うのである。


「ガーネット王妃は不死身だったのね」


「しかし……何故、数千年も経っているのに心臓や血液が新鮮なのでしょう?普通なら黒ずんで腐りますよね?」


「ええそうね……」


私は椿と一緒にガーネット王妃の死体を調べることにした。まず、爪が伸びているのが気になったので切ったらまた元に戻った。そして、胸部から胸の皮膚を裂くと鶏のささみみたいに揉みごたえのある筋肉質で至って健康で薄橙色に輝く綺麗な心臓が顕に。


「先生、この心臓は生きているみたいに綺麗ですね」


「うん、触っても筋肉質みたいなのだけど柔らかいわね」


しかし、ガーネット王妃は死んでいるはずである。

脈もない……。


私は血液検査をしたがやはり普通の血液だった。


一体どうなっているのか?更に驚いたのはこの心臓の大きさと血管の長さである。


なんと、手の爪と同じ長さだというのだ。


そして筋肉と同じ弾力があると言うのだ。あり得ない話である。


まるで別の生き物のように思えてくるぐらいだ。そこでガーネット王妃の全長を調べてみたら、彼女が超古代バラージの民で小巨人族の王妃で、しかもその小巨人族は不死身で不死の心臓や血管を持つことが分かり、更にそれが超古代の時代を生きている人間と同じであると言うのだ。


「まさか……ガーネット王妃は生きていただなんて!」


私は倒れた拍子に見た不思議な夢を思い出した。もしかしたらあの夢は実際にあった出来事なのかも知れない。


もしそうだとしたら、この超古代人は本当にいたのか?と思った瞬間であった。そしてそれから数年後に分かったことは地球上にいたバラージの民族は既に滅亡していたはず。

クレオパトラ風の女性、ガーネット王妃の姿がチラつく。もしかしたら、地球上で最初の超古代人はガーネット王妃だったのかも……。


「ガーネット王妃は生きていた!」

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