HENTAI! ふたりはフェチピュア!

寺場 糸@第29回スニーカー大賞【特別賞

プロローグ

 蒸し暑い、初夏の午後。


 エアコンがオフになっているせいで、その部屋は、うだるような熱気と、少女たちの汗の匂いに満ちていた。


 部屋には、氷が溶けて薄くなったレモンティー。しわくちゃのスカート。そして、割れた手鏡があった。


 そして、ベッドの上に、少女が二人。


 まるでミルクレープの生地みたいに、ぴったりと、身体を重ねていた。


 どちらも、衣服が乱れている。


「しほ……ごめん、あたし、あたし……」


 一人の少女が、馬乗りになりながら、泣いていた。


 そうすることしかできないとでも言うように、力を振り絞って、相手の少女を抱きしめた。


「みさき。泣かないで。私は、大丈夫だから」


 一人の少女が、顔から血を流して、笑っていた。


 目の上に走る鋭い痛みに耐えながら、ふわりと、相手の少女の頭を撫でた。


 蒸し暑い、初夏の午後。


 シーツが、少女たちの血で、赤く染まった。

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