僕とおまじない

 おまじないって信じるか?

 僕は全然信じてない。


 だけど、最近、クラスの女子の間で流行ってる、とあるおまじないがある。

 それは、「学校の購買で売っているピンクのウサギの消しゴムに、好きな人の名前を書いて使いきると両想いになれる」というものだ。


 それを聞いた時、僕は鼻で笑った。

 信じるに値する根拠も何も無いじゃないか、と。


 それとは全然関係ないけど、僕はある日、学校の図書室で1つの消しゴムを拾った。

 それは、かわいらしいピンクのウサギ形の消しゴムだった。

 心当たりのないその消しゴムには、なぜだかカタカナで僕の名前が書いてあった。

 ちなみに、僕の下の名前だけ。名字は書かれていなかった。


 この消しゴム、誰のだろう? 

 図書室なんて、学校中の生徒が利用する。

 この消しゴムの名前――僕と同名の誰かのことか?

 それとも……?


 僕はブンブン頭を振った。

 そうやって、突然うるさくなった胸の音を振り払う。

 この消しゴムの持ち主が、あのおまじないを信じてる根拠なんて何もないんだぞ。


 そう。僕は、おまじないなんて信じてない。

 信じるに値する根拠も何も無いじゃないか。


 だけど、その時――妙に汗ばんだ手で、拾った消しゴムをギュッと握った時――。

 僕は。

 ちょっとだけなら信じてもいいかも……なんて思ってしまったのは、誰にも言えない秘密だ。


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