勇者
@me262
第1話
やった!大賢者の秘技は成功した!私は異世界への転移を果たしたのだ!斯くなる上は、この世界に潜む大魔王とその眷属たちを見事討ち果たし、同胞たちの無念と怒りを晴らすのだ!許さんぞ大魔王!数多の無辜たる命を奪い、世界を恐怖と絶望の淵に叩き落としておきながら、その罪を償うこともなく、別の世界に逃げ込むなど!この地で力を蓄えて捲土重来を図るつもりだろうが、そうはさせぬ!如何に巧妙に隠れようとも無駄な足掻き!既に大賢者は貴様等の居場所を突き止めている!待っているがいい、我が聖剣を以てその禍々しい心臓に正義の一撃をくれてやる!
「……それで、被疑者は何か話したのか?」
「それが警部、誇らしげに色々と話してはいるのですが、全く意味がわかりません。通訳も頭を抱えています」
「心神耗弱を狙って、デタラメ喋ってるんじゃないのか?あんなイカれた格好だし、最初からそのつもりだったんだろう?」
「通訳の話では、そうとは言いきれないようで。決まった単語が定期的に出てくるし、一定の文法に基づいて何らかの言葉を使っているように見えると。只、どこの国の言語にも当てはまらなくて。時間をくれれば、解析は可能だそうです」
「……本人の素性は何もわからないのか。これから記者会見なんだよ。手ぶらって訳にはいかないだろう。世間は大騒ぎだ。よくも剣1本で、あれだけの大量殺人をやりおおせたもんだ。大体、あんな風体した奴が街中を堂々と歩いていたのに何の通報もされないなんて、おかしいだろう。本物の剣を持っていたんだぞ」
「もうすぐハロウィンですからね。ゲームのコスプレしていると思われたんでしょう」
「被害者も加害者も外国人。しかも被害者たちのパスポートは全部偽造。あいつ等一体何者だ?この国で何をしていたんだ?わからないことだらけだ。上の連中も大ショックを受けているよ。法律を見直す必要があると言っている」
「鑑識によると、凶器の鑑定にも時間がかかるそうです。余りにも切れ味が良いので、通常では有り得ないと」
「……1000人近く斬り殺しているんだからな」
警部は顔をしかめて頭を掻き毟ると、溜め息を吐きながら捜査本部を出て会見場に向かった。
被疑者の所有していた剣、鎧、盾、兜等は後の鑑定で推定10万年以上前に製造された物であるとの結果が出た。無論、この事は伏せられた。
勇者 @me262
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