『詩』自分の存在

一乗寺 遥

心の抗いと屈服

 足をゆっくりと一歩一歩踏み出す


 指先から伝わる鈍い痛みはやがて


 まずは危険な寄生虫のように


 すこしづつ、我が腹から胸へと


 這いながらよじ登り


 心を蝕もうとする


 我は懸命に抗おうとするが


 遅く、手の指先やほおのあたりまで


 我が意のままにもはや動くことはない


 宿されてしまったのだ


 しかしそれは他でもない自分なのだ 


 これまで抑えられてきた自分なのだ


 ただじっとじっと動くこともなく


 ひっそりと静かに座っていただけだ


 しずかにしかし絶えることなく


 今日まで共存してきたのに過ぎない

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『詩』自分の存在 一乗寺 遥 @yoichijoji56

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