第二章
第14話 与えられる任務
学生までも多く動員せざるを得ないほどの任務ラッシュ。
その勢いは少しずつ落ち着きを見せ始めていた。
あれ以降、レグロス達は任務に出る事はなく日々を平和に過ごしている。
――もっとも特訓の弊害で頻繁にボロボロになっていたりはしたが。
そんなある日の事。
「レグロス、来週忘れないようにね」
「はい?」
師のサフェロがまた突拍子もないことを言い出した、とレグロスは頭が痛くなった。
幼い頃からこのノリに付き合っているせいか慣れてきてしまっているのも困ったところである。
「……一体なんの話か聞かせてもらっても?」
「ん?あぁ言ってなかったかぁ」
昔からだが言ってもいない事を言ったと勝手に認識して話を進めようとするところは弟子としてどうかと思う。
そんなレグロスの内心にある不満を余所にサフェロは少し考え込む仕草を見せつつ説明を始めた。
「前も言ったけどね、君には経験を積む機会が多く必要だ」
「えぇ」
「そこで丁度経験を積めそうな仕事を見つけたんだよ」
経験を積めそうな仕事。
それを聞くと真っ先に脳裏を過ぎるのは先日のような任務だが――。
恐らく少し違うのだろうとは察せた。
「上級生、下級生合同の探索、調査任務だってさ」
「合同での探索、調査ですか」
サフェロから渡された一枚の紙切れ。
そこに書かれている内容をレグロスはじっくりと読み上げる。
師であるサフェロの信頼感からとち狂った内容である事を警戒していたがその心配はいらないようで思わず胸を撫で下ろした。
まぁ油断は出来ないのだが。
「ま、察してるとは思うけど……状況をこのままにしておくのは正直悪手だ」
それは時たま見せる師の真剣な目。
茶化す事でもないので今はただ耳を傾ける。
「壊人達が少しずつ動き出し、壊獣にも活性化の傾向がある……後手に回れば人類に勝ち目はない」
確かにその通りだとは思う。
実際先日までは問題が多くなりすぎて人手が足りなくなっていたほどだ。
なんとか凌げはしたが、だからといって次回以降も同じように――とはいかない。
それはあまりに楽観がすぎるだろう。
「だからこちらも準備を進めたい、壊人及び壊獣を一気に叩くためにね」
「一気に……?」
「そ、だからこその調査ってわけさ」
なるほど、とレグロスは内心納得した。
恐らく調査任務はこれに限った話ではない。
各地をしっかりと調べて壊獣の動きの傾向や痕跡を調査。
あわよくば壊人達の根城も見つけ出して戦力を集め叩く、という構想だろう。
仮に根城が分からなくても変化や動きの情報を得るというのは大事だ。
それは分かる。
だがその納得と同時に一つ新たな疑問が生まれた。
「なんで数ある中からこの任務を?」
「ん? これが一番適してるかなって、色んな意味で」
――レグロスはちょっと後悔した。
なんかこの口ぶりだと碌でもない思惑とかあるんじゃないか、とか思ってしまった。
とはいえ後悔したところで無かった事になど出来ないのだから受け入れるしかないのだが。
「ま、心配しなくてもいいよ。君にとって悪い話にはならないのは確かだと思うし?」
「師匠の保証ってどこまで信じていいか不安なんですよね、人格面での信頼性が足りないっていうか」
「今日も今日とて言葉のナイフがキレッキレだねぇ」
なんにしてもやる事は変わらない。
レグロスは決意を新たにして再度修行に打ち込んだ。
――そして一週間の時はあっという間に流れ合同調査任務、開始当日が訪れる。
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