第107話 問答無用
たどり着いた部屋の先で俺たちを待っていたのはヘレナ様とエクリア様だった。
どちらもロミーナの家族だが……どうにも様子がおかしい。
怪しいと感じたモリスさんがふたりへと近づいていったが、次の瞬間、エクリアさんの魔法によって彼は石化してしまった。
「なんてことを……」
腕を失くしてもなお自らの信じる道を突き進もうと努力を重ねていた誇り高き騎士――俺が信頼を寄せるモリスさんを石像に変えられ、怒りの感情が溢れだした。
とはいえ、相手はロミーナの家族。
これがまったく無関係の相手ならすぐさま攻撃を始めるのだが、そういった事情もあって脳内では未だ葛藤が続いていた。
そんな俺とは対照的に、妹の夫である俺に対しても容赦なく石化魔法を仕掛けようとしているエクリア様。
これはもう……ためらっている暇はない。
「カルロ! 反撃するぞ!」
「っ!? い、いいんですか!?」
「どういう理由で俺たちを襲ってくるのかは分からないが、このまま石像になってしまうわけにもいかないだろう!」
「そ、そうですね! なんとか捕らえて自白させましょう!」
作戦は決まった――が、実行できるかどうかはまた別の話。
相手は学園でもトップクラスの成績ですでに魔法兵団から入団のオファーが来ているというホープ。
かたやこちらは田舎領主の息子に覚醒前の本編主人公。
二対一という数の有利はあるが、正直それでどうこうできる相手ではない。
それに……気になるのはヘレナ様だ。
現役の学生であるエクリア様はともかく、どうして彼女が学園にいるのか。皆目見当もつかないが、ふと脳裏に浮かんだのは原作ゲームでの展開だった。
俺とロミーナは本来主人公であるカルロと対立するボスキャラ。
割とあっさり倒されるので、ゲーム内では悪役女帝になる経緯など過去の話はあまり掘り下げられていない。
だが、あんなにもいい子だったロミーナが圧政で人々を苦しめるようになったのには何か理由があるはずだ。
この世界に転生してから、俺はずっとそれを考えていた。
生産魔法が使えるようになり、生活が落ち着いてからは特に。
だが、現状の環境であのような悪役になるなんてあり得ない。
だとしたら、もっと別の何かが彼女の心の奥底に眠っていた悪意を呼び覚まさせたんだ。
そしてその理由の一端を担っているのが――ヘレナ様なんじゃないか?
「よそ見をするとは随分と余裕があるわね」
「うおっ!?」
考えを巡らせている間にエクリア様の攻撃魔法が襲いかかってくる。
くそっ。
これじゃあ思考を整理する暇もない。
まずはエクリア様をどうにかしなくちゃ!
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