第103話 怪しいエクリア
ロミーナのふたりの姉が見せた不可解な行動。
その謎を解明するため、俺とモリスさんとカルロの三人でこっそり寮を抜けだし、追跡を開始する。
今回の結界魔法騒動の裏に彼女たちが関与しているとなったら、自然とロミーナも関係してくると俺は睨んでいた。
もちろん、ロミーナが悪事に加担したとは思っていない。
ただ……妙な予感がするのだ。
この事件の結末――誤った展開に話が進んでしまえば、ロミーナは原作同様の悪役女帝となり、最終的には主人公であるカルロに倒されてしまうかもしれない。
確証があるわけではない。
けど、先ほどからそんな不安ばかりが襲ってくるのだ。
「アズベル様? どうかしましたか?」
「っ!? い、いや、なんでもないよ、カルロ」
物陰に隠れながら移動をしている最中、カルロから声をかけられて思わず慌てたような反応になってしまった。
「何か不安なことでも?」
俺の言動がおかしいと感じたモリスさんも心配そうに尋ねてくる。
……いけない。
とにかく今はあの姉妹に意識を集中しなければ。
「大丈夫だよ。それよりも追跡を――あっ! いた!」
思わず声のボリュームが上がってしまったが、どうやら向こうには気づかれていないようでひと安心。
俺たちは身を隠しつつ、ゆっくりと物陰から顔を出してエクリアさんの様子をうかがう。
彼女は周りを気にしながらとある校舎へと入っていった。
「研究棟じゃないか……」
そこは魔法に関してさまざまな研究や実験が行われている建物で、許可なく一般生徒が立ち入るのを禁止している場所だった。
「今は非常事態ですからね。何か分かったことを伝えに来たのかもしれません」
「けど、それなら周りにいる先生に伝えるだけでよくないか? ここは生徒が簡単に入ることのできない場所だし」
カルロの言うケースも想定できるのだが、どうにも怪しすぎる。
「とにかく行ってみよう」
「で、でも、一般生徒は許可なく入っちゃダメだって――」
「カルロ、俺たちはこの学園の生徒ではなく、あくまでも体験入学でやってきただけだ。慣れていない広い校舎でこのような非常事態が発生すれば助けを求めてうっかり入ってしまったという理由はすんなり通るはず」
「まったくもってその通りですな」
「モ、モリスさんまで……分かりました。俺も男です。腹を括りましょう!」
よし。
これで俺たちの覚悟は整った。
すべての謎を解くヒントは――あの研究棟に隠されているはずだ。
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