第91話 いざ学園へ

 学園への学園見学は一泊二日で行われる。

 俺たち以外にも参加者がいるという話だったので、もしかしたら友だちができるかもってロミーナはウキウキしていた。


 俺も楽しみにしてはいるが……正直、不安の方が大きいかな。

 モリスさんやパウリーネさんもフォローをしてくれるという話だったが、基本的に護衛騎士たちは屋敷で生活している時のように常に一緒というわけじゃない。

 ただ、例の事件以降も黒幕の存在がハッキリとしていない事実から、騎士団を経由して特例が認められるだろうと父上は話していた。ロミーナの実家の立場を考慮すれば、国としても何か手を打たなければならないと考えるだろう。


 とはいえ、学園内にいる間は安全に暮らせそうかな。

 他にも貴族の子息や令嬢が通っているらしいし、国のメンツってものがある。そう易々と侵入を許すようなセキュリティじゃないだろう。


 なので、注意を払うべきは移動中――つまり、今現在の状況というわけだ。


 しかし、ここも大所帯での移動という手段で解決。

 最初はこんなに大勢いるのかと驚きはしたが、結果としてこれが大成功だな。


 しばらくすると、学園が見えてきた。


「「おおっ!」」


 馬車の窓からその光景を目の当たりにした俺とロミーナは驚きの声をあげる。

 学園は想像以上の規模だった。

 広大な土地に校舎がいくつか点在している。卒業生であるモリスさんやパウリーネさんの話だと、年齢に応じてどこの校舎で学ぶか分けられるらしい。さらに年齢が上がると、今度はさらに能力順のクラス分けが待っている。まさに実力至上主義って感じだな。

 多少の忖度はありそうだが、あまりにもひどいと退学もあるってパウリーネさんは言っていたが……それはかなりレアなケースだろうな。少なくとも名家の出身であるご子息やご令嬢はそう簡単に退学なんて処分にはならないはず。


 しかし、これについては俺もロミーナも心配する必要はないかな。

 どちらも真面目に授業を受ける気ではいるし、問題は試験の点数くらいだ。こちらでも赤点みたいな制度があるようなので、しっかり勉学に励まないとな。


 到着を目前にして、俺たちはモリスさんからもう一度これからの段取りについて説明を受ける――が、これが分かりやすいので忘れる心配もないんだよなぁ。

 まずは学園長に到着のあいさつをし、それから学園内を見学して回るというシンプルなものだ。案内役は在校生がしてくれる手筈になっており、すでに学園長室でスタンバイしてくれているという。


「いよいよだね、アズベル」

「ああ。楽しみだな」


 俺もロミーナも大いに浮かれていた。

 ――あんな大事件が起きるなんて夢にも思わず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る