第84話 形勢逆転

 ついに敵の魔法使いを守っていた防御壁の破壊に成功。

 さすがにこれは想定外の事態らしく、分かりやすいくらい動揺した表情を浮かべている。これまでまったく揺らぐことがなかっただけに、俺たちは手応えを感じていた。


「身柄を拘束させてもらおう」


 イルデさんは魔力をロープのような形状に変えて敵の魔法使いへと放つ――いわゆる拘束魔法ってヤツだ。あれに捕まると魔力を吸収されてしまい、魔法が使えなくなってしまう。

 敵もそれを知っているから、必死になってよける。

 

――明らかに、さっきまでの勢いは死んでいた。

 

 防御壁を破られたことで動揺しているというのは分かるが、それでも彼女はかなりの使い手であるのに違いはない。にもかかわらず、ここまで取り乱されるとは……恐らく、これまであの壁を突破してきた者がいないから、対処法を見出せずにいるようだ。


「ロミーナ! 援護しよう!」

「うん!」


 今なら俺たちの魔法や魔道具での攻撃も通じるはずだ。

 そう確信した俺たちはイルデさんと呼吸を合わせて連携攻撃を仕掛ける。日頃から一緒に鍛錬を積んでいるだけあって、こうした非常事態にも即座に対応できるのだ。


 最初は三対一であってもうまくさばけていたが、徐々に慣れてスピードが増していった俺とロミーナの攻撃に追いつかなくなっていき、ついに――


「観念してもらおう!」

「っ!?」


 イルデさんの拘束魔法が敵の魔法使いを捕らえた。

 魔力によって生みだされた強力なロープにがんじがらめとなり、身動きが取れなくなる敵の魔法使い。なんとか脱出しようと試みるが、魔法を使おうとすればロープに魔力を吸収されてより締めつけが強くなるという悪循環。

 やがてあきらめたのか、抵抗する素振りを見せなくなる。

 さらに時間が経つと、敵の魔法使いの体から湯気のようなものが出てきて――彼女の体が少しずつ変化していった。

 最終的には幼女の姿から老婆へと変化。

 というか、ただ老けただけじゃなくまったくの別人になっているな。


「それが君の本当の姿が」


 やはり、魔力で容姿を変えていたのか。

 子どもだったのは相手の油断を誘うための狡猾な罠……えぐいことするなぁ。



 拘束してから一時間ほど経つと、事態を知ったモリスさんやパウリーネさんが多くの騎士を引き連れて戻ってきた。

 ミリーさん曰く、屋敷を襲った魔法使いは大陸中に指名手配されている凶悪犯らしく、余罪もたっぷりあるので追及が楽しみらしい。

 それが進めば、あの魔法使いがどうして俺とロミーナを襲ったのか、その理由も分かるだろう。

 果たして、黒幕は誰なんだろう。

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