第72話 青い髪の女魔法使い
魔法の杖を修復する作業は困難を極めた。
一から作りだすのはかなり難しいと踏んでいたが、まさか直すだけでもこれほど苦労するというのは誤算だ。
試行錯誤を繰り返したが、なかなか名案が生まれず――気がつけば、ミリーさんがパルザン地方を訪れる日を迎えていた。
結局、この日までに有効な手立てが思いつかず、ミリーさんの杖を直せそうにない状態で彼女の到着を待つことになった。
「気にする必要はありませんよ、アズベル様」
「モリスの言う通りです。杖の修復は職人に依頼しているようですし、心配はいりませんよ」
「ふたりとも……ありがとうございます」
気落ちする俺をフォローしてくれるモリスさんとパウリーネさん。ロミーナも「アズベルは頑張ったよ」と手を取って励ましてくれた。
報告によれば、ミリーさんはパウリーネさんの言ったように杖の修復を専門の職人へ依頼をしているそうだが、しっかり直すには最低でも一年はかかるらしい。
ただ、モリスさんの腕のように「確実に元通りとなる見込みすらほぼゼロ」という状況ではないため、気長に待つとミリーさん本人は言っていたらしい。
「ミリーはアズベル様のお気遣いだけでありがたいと言っていました。そして、今はあなたがなすべきことに力を注いでほしいとも」
「そうだったんですね……」
パウリーネさんから伝えられたミリーさんの言葉に身が引き締まる。
――そうだ。
今は俺たちを狙っている謎の魔法使いの居場所を特定するために、探知魔道具を完成させる必要がある。
「よぉし……」
気合が入ったところで、うちのメイドたちが来客の知らせを伝えに来る。
ついにミリーさんが舞踏会の夜に起きた大型モンスター襲撃未遂事件の資料を持ってきてくれたようだ。
俺たちは彼女を出迎えるため、屋敷の外へ出た。
すると、
「わざわざお出迎えいただき、ありがとうございますわ」
まさにお嬢様といった口調でお辞儀をしたのは青い髪の女性魔法使い――どうやら、彼女がミリーさんのようだ。
「お待ちしていました、ミリーさん」
「ご所望の資料はこちらに」
「ありがとうございます」
早速、ミリーさんのまとめた事件の資料が入った紙袋を受け取る。それからすぐに彼女の視線は同僚であるモリスさんとパウリーネさんへと移った。
「おふたりとも、久しぶりですわね」
「派手に暴れ回っていると聞いたぞ、ミリー」
「勲章の数も増えたようだな」
「代償は大きくつきましたけどね」
同期のモリスさんとパウリーネさんはいつもより砕けた態度でミリーさんと会話をする。同じ志を持つ者同士でもある前に仲の良い友人でもあるというわけか。
さて、資料は手に入った。
あとはイルデさんとも相談しつつ、魔道具づくりに専念するか。
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