第52話 パウリーネからの情報

 素材集めをしつつ、パウリーネさんからモリスさんのことを聞きだす。


「パウリーネさん。モリスさんについていろいろと教えてくれませんか?」

「? なぜです?」

「彼の義手を作ろうと思うんです」

「義手なら既に――まさかっ!?」


 こちらの狙いを察したパウリーネさんが声をあげる。どうやら、彼女もモリスさんの義手の精度については把握しているようだ。


「今のままではモリスさんは剣を振れません。もっと高性能の義手を作ることができれば、以前と変わらない実力を取り戻せるはずです」

「そうなれば騎士団は大喜びでしょうね。彼が右腕を失ったと知った時は……過去に経験がないほど重苦しい空気でしたから……」


 ワイバーン討伐という素晴らしい功績を残しながらも、右腕を失って二度と剣を持てなくなってしまった英雄。今でこそ日常生活は送れるが、かつての栄光からは比べ物にならないほどの落ち込みようだろう。


 そんなモリスさんをなんとか助けたいと思った。

 彼がいなかったら、今頃船は沈んで大変な事態になっていただろう。彼はウィドマーク家にとっても救世主なのだ。


 だからこそ、情報が欲しい。


「パウリーネさんの目から見て、モリスさんの剣の腕はどんな感じですか?」

「そうですね……文句のつけようはありません」

「おお! やっぱりめちゃくちゃ凄かったんですね!」

「えぇ――剣の腕に関しては、ですが」

「うん?」


 なんか……雲行きが怪しくなった?


「彼はなんというか……いろいろと足りないんですよ。まず言葉ですね。感情を表にだして戦うのはよくないという持論があり、それについては私も同意見なのですが、それを私生活にまで持ち込むのはさすがにどうかと思います。あと、対人関係の構築も上手い方ではなく、どちらかというと下手な部類でしたね。私が騎士団にいた頃は同僚ともよく衝突していましたが、そのたびに私が仲裁に入ってフォローしてきたんです。それなのに彼と来たらいつものようにすました顔で『助かった』というくらいで他は何もなし。そこは食事に誘うとか他にもっとこうやりようがあると思うのですが、そういう気の利かせ方を知らない朴念仁のくせになぜか女性騎士や魔法使いからの人気は無駄に高くてあっちからいろいろとお誘いが――」

「あ、あの、パウリーネさん?」


 めっちゃ饒舌に語るじゃん。

 えっ?

 何?

 パウリーネさんって……実はモリスさんに好意があったりするの?


 俺がドン引きしているのに気づいたパウリーネさんはハッと我に返り、わざとらしい咳払いを挟んでから「申し訳ありません。取り乱しました」と頭を下げた。


 ……とりあえず、彼女がモリスさんに対して小さくはない感情を抱いているというのはよく分かった。

 これはどうあっても義手づくりを成功させなくちゃな。

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