第43話 レベルアップ

 これまでにない規模のアイテムづくり。

 今出せるすべてを注ぎ込んだ結果は――大成功だった。


「や、やった……」


 俺は脱力しながら呟く。

 目の前には湖に浮かぶ船。客船ではなく、イメージ通りの貨物船だった。海洋ではなく湖を横断する目的のためサイズはそこまで巨大というわけではないが、これなら大量の荷物と人を同時に運搬することが可能になる。


「す、凄い……」

「さすがですね、アズベル様」

「生産魔法っていうのはあんまり興味なかったけど、ここまでやれるとはねぇ」


 ロミーナ、パウリーネさん、そしてイルデさんが駆け寄り、成功を喜んでくれた。あとはきちんと航行できるかどうか確認するだけだ。


「じゃあ、早速中に入って動かしてみよう」

「で、でも、船を操縦できる技術はあるの?」

「それなら心配いらないよ。ちゃんと考えてあるから」


 これが普通の船舶なら、専門の知識や技術が確かに必要となってくるだろう。

 だが、こいつは俺が魔力で生みだした船。

 おまけに広い海を航海するわけでもないので、操縦自体は実にシンプルな仕様としてある。

 

 みんなと一緒に船に乗り込むと、まず大きなクリスタルが目に付く。これが操縦する上でとても重要になってくるのだ。


「こいつがいわば制御するための魔力結晶さ」

「魔力結晶……なるほど、そこへ魔力を集めることで、事前に指示していた通りの動きを忠実に再現できるわけか」

「その通りです」


 さすがはイルデさん。

 こいつがどういう意図で設置されているのかを一瞬で見抜いた。


「これなら魔力を持つ者であれば誰でも動かせるというわけか」

「しばらくは領民の方々にも協力してもらって、この船を運行させていこうと思っています」


 すでにガナス村の人々には打診をしてあり、何人かが協力を申し出てくれた。これが新しい働き口となれば、産業として定着するかもしれないな。

 それを実現させるためにも、まずはきちんと動くか確認だ。


「じゃあ、動かしてみますね」


 クリスタルに魔力を込めていくと、徐々に船体が動き始めた。

 こちら側の桟橋から徐々に離れていき、対岸の桟橋に向かって湖を進んでいく。


「おお! この調子なら湖岸を回って村を目指すより大幅に時間を短縮できますね!」


 興奮気味に語るパウリーネさん。

 正直、俺も想定以上にうまくいってテンションがめちゃくちゃ上がっていた。


 動き自体は問題なさそうなので、あとは耐久テストだ。

 大量の荷物を運び込み、重さに耐えられるかどうかのシミュレーションを行う。こいつもパスできれば、いよいよ本格的に運用していける見通しが立つぞ。


 交易路問題はこれでなんとかクリアできそうだ。




…………………………………………………………………………………………………

【お知らせ】


明日の朝7:00からカクヨムコン用の新作を投稿します。

タイトルは、


「田舎暮らしの魔草薬師 ~不正はびこる元職場を解雇されたので独立したら、なぜか各界の超一流たちが集まってきました~」


です!

応援よろしくお願いします!<(_ _)>





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る