第41話 視察
土砂崩れの撤去作業が終わるまでの期間限定で、新たな交易路づくりをすることになった。 その案として俺が父上に提案したのはガナス村近くの湖を船で横断するというものだ。
こちらの計画も少しずつ進めていきたいのだが、まずは土砂崩れの様子を見てみようと父上と一緒に現場を訪れた。
もちろんロミーナもいるし、パウリーネさんやイルデさんもついてきてくれた。
ちなみに、パウリーネさんとイルデさんはすっかり仲良しとなっている。最初はロミーナの近衛騎士という立場もあるのだろうが、イルデさんの実力を疑っている節があった。
しかし、イルデさんが魔女としてしっかりとした実力があり、その指導のおかげでロミーナは着実に氷魔法の制御ができるようになってきた。
パウリーネさんは日々成長していくロミーナの姿を見て、イルデさんへの信頼度は日々増していったようだ。
このふたりが手を組めば、相当な戦力になる。
だから、今は理想的な関係が築けているなって思うのだ。
――そんなことを思っているうちに目的地へ到着。
「うわぁ……こりゃ酷い」
現場を目の当たりにした俺の第一声はそれだった。前世でも土砂崩れの場に居合わせた経験はないのでハッキリとしたことは言えないけど、かなり大規模じゃないか?
こいつをすべてどかして元通りにするにはかなりの日数がかかりそうだ。おまけに国としては隣国との関係を優先して橋の建設に力を入れている。なので、協力を仰ぐのは難しい状況といえた。
俺たちだけでどうにかしなければいけない。
そういう厳しい状況であるというのは重々承知していたが……まさかここまでとは思わなかった。
こうなると、湖をわたる船だけじゃなく、この土砂崩れの撤去も急がなくてはならないだろう。つまり、俺の生産魔法をこちらでも生かせないかどうか考える必要があるのだ。
「あれだけの土砂を短時間で撤去する方法か……」
重機でもあれば作業は捗るのだろうが、さすがにそこまでの物を生産魔法で生みだすのは難しいか。
「まあ、ここは地道に根気強くやるしかないな」
父上はため息を交えながら語る。
現状ではそれが最善の策なんだろうけど……どうにかしてもうちょっとスピードアップできないものか。
考えているうちに、父上は集まっている者たちへ指示を飛ばして撤去作業が始まる。方法はとにかく人力で砂をかき集め、それを別の場所へ運搬していくという実にシンプルなものだった。
工程が単純だから、みんなそれぞれにやるべき分担がハッキリとしており、それぞれの場所で全力をだしている。これについてはいい傾向だ。
ただ、やはり作業時間の遅さが気になる。
ここを改善していく案も練っていかないとな。
撤去作業に勤しむ人々を見送った後、俺たちは自分たちの仕事場でもある湖へと移動する。
しばらくあちらは父上に任せて、俺は俺で任された仕事に力を入れよう。
「よし。まずは素材集めからだ。みんなも手伝ってくれ」
「「「「「おおぉ!」」」」」
ロミーナ、パウリーネさん、イルデさん、そしてメイドさんたちなど、協力を申し出てくれた人たちと協力してまずは素材集めから始める。
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