第24話 破滅へのファースト・フラグ
【ブレイブ・クエスト】の主人公であるカルロからもたらされた情報――だが、俺はそれに覚えがあった。
原作ゲームではロミーナがこのオルメド王国を支配している。
そのきっかけになったのは……彼女が子どもの頃に起きたある事件がきっかけだという。詳細についてはモンスターが絡んだ国家を揺るがす事態が起きたってくらいしか触れられていないものの、その「国家を揺るがす事態」というのがカルロの訴えている王都近くで起きている異変の数々ではないのか。
だとしたら、これは今後の俺たちの命運を分ける大きなターニングポイントになる。
しかし、兵士たちから厄介者扱いを受けているカルロの言葉を周りに信じさせるのはかなり困難だ。
こうなったら……イチかバチかだけど、あの作戦でいこう。
「すみません。僕はそろそろ中へ戻ります」
「分かりました。あいつはきっちり外へ放りだしておきますのでご安心ください」
「お願いします」
俺は一度身を退くふりをして、彼が解放されてから単独で声をかけることにした。
「おら、こっちだ」
「さっさと歩け」
兵士たちに小突かれながら、カルロは城の廊下を歩いていく。その間も「信じてくれ!」や「本当に危ないんだ!」と大声で訴えるが、誰も聞く耳を持とうとしない。
しかし……ここまで差がでるものなのか。
【ブレイブ・クエスト】は貧民街で生まれ育ちながらも、清く正しい心を持った主人公カルロの成り上がりというのがストーリーの根幹だ。
ゆえに、彼が人をだまそうとしているとは思えなかった。
それを知っているのは俺だけ――だから、なんとしても彼から情報を得てこの国にこれから起ころうとしている事態を食い止めたいと思った。
きっと、これこそがロミーナの破滅フラグのひとつだろうし。
「とっとと失せな」
「ここはおまえのようなヤツが来るところじゃないんだよ」
カルロの身柄は警備兵から城門の門番へとわたされ、そのふたりから背中を蹴り飛ばされる形で城から締めだされた。
そんなカルロは項垂れながらも体についた土埃をパンパンと払い、王都の外れにある貧民街へ戻ろうとする。そこへ、門番の目を盗んで密かに城門から出た俺はカルロに声をかける。
「あ、あの」
「えっ?」
いきなり声をかけられて振り返ったカルロは、さらに驚いて目を丸くしていた。
無理もない。
まさか城内で舞踏会中の貴族に声をかけられるとは思っても見なかったのだろう。
「あ、あなたはさっきダンスホールから出てきた……」
「俺はアズベル・ウィドマーク。パルザン地方領主の息子だよ」
「そ、そんな立場の方がどうして僕のところへ……」
「さっきの詳しい話が聞きたくて追いかけてきたんだよ」
「詳しい話って何?」
「この城へ大型のモンスターが迫っているって――へっ?」
いきなり女の声が聞こえて、思わず変な声が漏れる。
おまけにこの声は……聞き覚えがありすぎるぞ。
「ロ、ロミーナ!?」
「気になったからついてきちゃった」
いやいや、ついてきちゃったって……どうするの!?
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