第14話 お披露目

 次の日。


 午前中はすっかりイルデさんとの魔法特訓が日課になっているロミーナ。

 その成果は着実に出つつあった。


 当初、ほとんど制御することができなかった氷魔法だが、最近では力を抑えて使用することが可能になってきている。完全に制御できるわけではないが、以前のように感情が高ぶったら手当たり次第に発動していくという暴走はほとんどなくなった。


 突発的な事態に遭遇すると意思とは関係なく放ってしまうが、それでもだいぶよくなった方だよ。


「今日のところはここまでにしようか」

「あ、ありがとうございました……」


 イルデさんが終了宣言をする頃になると、ロミーナはヘトヘトに疲れきっていた。制御できないとはいえ、魔法は魔法。連発すれば魔力は消費するので疲労感も凄まじいのだろう。


 さて、鍛錬が終わったタイミングで俺はイルデさんに声をかける。


「すいません、イルデさん。ちょっといいですか?」

「なんだい?」

「見てもらいたいものがあって……魔法に関するアイテムなんですけど」

「ほぉ、魔法ねぇ」


 やはり魔法という言葉をチラつかせたことで、イルデさんの関心を引けたようだ。

 俺は魔銃を魔法庫の中から取りだし、その性能について説明をする。それから、今日の本題である魔法効果をもたらす魔弾の効果をお披露目する流れとなった。


「い、いきます」


 標的は庭園の隅に生えている老木。近いうちに庭師が切る予定となっているため、今回の試し撃ちにはもってこいだ。

 炎だと燃えてしまうので、ここは水魔法の魔弾を使おう。あと、弾の数は多くないので外さないよう可能な限り近づかなくては。できれば命中補正もつけたいところではあるが、これについては研究の余地があるな。


 とにかく、今できる限りのものを詰め込んで完成したこの魔銃――その威力を試し、魔法の専門家であるイルデさんからの評価が聞きたかった。


 狙いを定め、引き金を引く。

 銃口から放たれた水魔法は真っ直ぐ伸びていき、着弾。同時に凄まじい衝撃音が辺りに響き渡り、なんと老木をへし折ってしまったのだ。


「なっ!?」


 この威力の高さには作った俺自身が驚いた。

 せいぜい幹を濡らす程度かと思いきや、まさか軽々と折ってしまうなんて……安全に配慮をしておいて正解だったよ。


 一方、状況を見守っていたロミーナやパウリーネさんたちは口をあんぐりと開けて立ち尽くしていた。たぶん、あの反応を見る限り、みんな俺が想定していたように水鉄砲くらいの威力だと想定していたようだ。


 ただひとり、イルデさんだけは冷静だった。


「見事な威力だ」


 そのイルデさんは拍手をしながらこちらへ歩み寄る。


「見かけない形状の武器だが、理にかなった素晴らしいデザインだ。こう言っては失礼なのだが、君にこのような造形のセンスがあったとは驚きだよ」

「あ、あはは……」


 俺の前世ではいろんなところで見かける武器なんですとは言えなかった。

 さらにイルデさんは続ける。


「何より素晴らしいのは、君がその武器の扱い方を熟知している点だ」

「えっ? そ、それは、この武器を作ったのは俺だから――」

「そういう意味じゃないよ。魔法の鍛錬を積んでいない者が簡単にそれと匹敵する威力や効果を生みだせる……これは想像以上に危険な話だよ」

「あっ……」


 つまり、量産すれば誰でも攻撃魔法が使える。

 でも、俺ならその心配はない。

 イルデさんはそう言いたいのだ。


「だが、君からはそう言った意思はまったく伝わってこない。その武器は自衛のための物なんだろう?」

「も、もちろんそうです」

「ならば、あたしがとやかく言う必要はないよ」


 そう告げると、イルデさんは指をパチンと鳴らし、箒を召喚。それにまたがって森の方へと帰っていった。


 ……一応、認めてくれたってことでいいのかな?

 ゲームでもこっちでも、謎の多い女性だよ。

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