男と女と、オカマは最強

「四月四日はオカマの日かぁ!」


 サチさんが、そう甲高い声を上げた。

 スタジオ練のあとで、ドラムのルカさんから手渡された告知ペラをよく見ると、『男は度胸ドキョー、女は愛敬アイキョー、オカマは最強サイキョー!』と、うまいこと韻を踏んだ文言が書かれてある。


 ルカさんの説明によると、三月三日はおひな様で、五月五日が端午の節句なので、間の四月四日はオカマの日だとかなんとか。

 ちなみに、さっきのことごとく韻を踏んだあの言葉は、ルカさんが掛け持ちで組んでいる『猫ヤンキー』が初めて主催で打つイベントの、サブタイみたいなものである。


「面白っ、この日だったらあたし行けるよ! ルカさんのライブまた観に行きたいっ」

「本当に? ありがとう!」


 サチさんの申し出に、感極まった声を出すルカさん。


 それに対し、ふいに、サチさんはボーイッシュな格好が多いし、化粧っ気もないよなぁと頭をよぎる。だいぶ前にバンマスのミチさんから、サチさんもマイノリティーの人だよとは教えてもらってたけど。


「ひかるちゃんも、もしよかったらライブ来てねっ」


 ニコニコしながら私を誘ってくれるルカさんに、私はまじまじと考える。

 確か四月は、新年度が始まったばかりでまだ通信大学の教科書も届いていない状態だから余裕あるよなぁ、とかシフトどうだったっけ、つい最近出たよなぁとか。


「予定確認してみますね、休みだったらいいんですけど……」


 そう言いながらスケジュール帳を確認してみると、その日はたまたま休みになっていた。


「私も行けそうです! 初、猫ヤンキー観るの楽しみです!」

「嬉しいっ、ありがとうね!」


 ルカさんの人懐っこい笑みが、眩しく光った。

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