偶然

身ノ程知ラズ

偶然

「おぉ!久しぶりだな!」


スマホをいじっていると声をかけられて顔を上げる


そこには大学時代の友人が屈託のない笑みで立っていた


「お前かよ!ホント久しぶりだな、5年ぶりぐらいか?」


「大学卒業してから会ってなかったもんな」


「今日は何でここに来たん?」


「実はな…彼女ができたんだよ」


「おおっ!お前が!?」


「それで今日デートしようってここで待ち合わせてるんだよ、そう言うお前は何でここに?」


「まぁ…俺も彼女ができてな、お前と同じでここに待ち合わせてるんだ」


「お前もか!奇遇だな」


「どんな感じなんだよ、その相手とは」


「まぁ順調だよ、優しいからさ、喧嘩とかもなく 、1週間前なんかは一緒に北海道に行ってきたよ、2泊3日で」


「おぉ、北海道なら俺の彼女も出張で行ってたらしいぞ」


「偶然だな、俺らの友情はそんなに固く結ばれていたのか」


「関係ねぇだろ」


そんな冗談を飛ばしながら話は進む


「というか今日大事な話があるって言って向こうから誘ってきたんだよ、これはワンチャンあるか?」


「とことん奇遇だな、俺も大事な話があるって呼び出されたよ」


「なんか被りすぎじゃねぇか?偶然にもほどがあるっつうか…」


「気にしすぎだろ、それより彼女の写真とかないか?見せてくれよ」


「おう、ちょっと待ってな」


彼はスマホを取り出し写真を漁る


「ほら、これ」


「は?え?」


「どうした?可愛すぎて声も出ねぇか?」


「そうじゃなくて、これ俺の彼女じゃねぇか!」


「は?そんなはずねぇだろ!?もっとじっくり見てみろ」


「じゃあ俺の彼女の写真も見せてやるよ!」


若干キレながら写真を探す


「ほらコレ!」


「おいマジかよ、おんなじじゃねぇか!どうなってるんだ!」


状況が把握できないまま2人とも黙りこくっていると


「あ、早かったみたいね」


2人の彼女が到着した


「「おいコレどういうことだ!」」


2人はほぼ同時に彼女に問いかける


「その様子じゃ大体分かってるみたいね、私浮気してたの、でもそろそろバレそうだなって思って、だからね2人と別れることにしたの、今日はそれだけ伝えにきたの。それじゃまたね、と言っても会うことはないだろうけど」


2人には彼女を追う気すら湧かなかった


「「女なんて所詮あんなもんだよな!」」


その夜、2人はそう語り合いながら5年ぶりの晩酌を始めた

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偶然 身ノ程知ラズ @mizoken

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