乙女ゲームでヒロインの幼馴染に転生しましたが、当の本人は攻略対象と全く恋愛してくれません

ちりちり

プロローグ

第1話 ある日気づいた生まれたての私



 ――バチン、と目の奥で火花が散る。

 痛みと衝撃で脳がぐらぐらと揺れている。

 お友達のひめちゃんが「まつりちゃん!まつりちゃん!」と泣きべそをかきながらわたしの名前を叫んでいるけれど、近くにいるはずなのに声が遠い。


 頭の後ろのところがじんじんと痺れている。とっても痛い。

 きっと後でたんこぶになる。またお母さんに叱られる。


 確か、いまわたしはひめちゃんと近所の公園に遊びに来ていて、ジャングルジムから落ちて――。


 ――あれ?

 わたしっていま、いくつだっけ?


 映像を倍速で巻き戻すように、「もう一人の私」の記憶が流れ込んでくる。

 えっと、「私」は日本で生まれて、17歳の女子高生で、でもある日交通事故にあって――。


 びくんっ、とその時の光景が蘇り、身体が反応する。

「まつりちゃんっ!?」

 わたしの身体が跳ねたのを見て、更にひめちゃんが驚いている。


 あれでも、何で死んだ「私」がいま、「わたし」になっているんだろ……?

 しかも、ここってまるで――。


 ピリピリと、頭の奥から電流が流れるように全身が痺れだす。


 ――『あの世界』のような。


 そこまで考えが至り、ハッとわたしは気がついた。

 見開いた目の先には、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたひめちゃん――もとい、この『ゲーム』の主人公、一ノ瀬真姫いちのせ まき、6歳の姿があった。

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