第39話 突撃隣の晩ご飯
温泉旅行から1日明けての放課後、生徒会室。
副会長の赤城春は思った、なんか空気が重いと。
今日から正式に仕事を始めたまゆちゃんは流石に優秀だった、教えた事は一度で覚えちゃうし要領もいい。これなら生徒会で即戦力としてやっていけるだろう。
反対に問題なのは黒崎会長の方だった、昨日の旅行の帰りからどうも口数が少ない、いつものまゆちゃんとの言い合いもなんかぎこちない感じだ。何か、二人の間に有ったのかな?
原因として考えられるのはあの鈍感鬼畜眼鏡だが、まゆちゃんはすでにあの眼鏡野郎にフラれているんじゃなかったっけ?
「ちょっとー! 明日菜さん。ここの資料間違ってるよ~」
「えっ、あ、御免。すぐ直すわ」
まゆちゃんがスッと立ち上がり、ツカツカと黒崎会長の机の前に行くと、自分のおでこをを黒崎会長の額に優しく当てた。
「なっ!」
「ふむ、熱が有るわけではないか。寝不足なの、明日菜さん? しっかりしてよね」
「うぐっ、……ちょっと顔洗ってくる」
そう言って黒崎会長が生徒会室を出て行く。なにも言い返さないなんて、どうしちゃったの黒崎会長?
「ねえ、春。明日菜さんなんかおかしくない? なんか知ってる」
「うーん、昨日の朝から元気ないと言うか、心ここに有らずって感じだよね。一昨日の夜は嬉し涙流してカニ食べてたから、その後なんか有ったってことだと思うんだけど」
「ん、一昨日の夜? まさかね……」
「まゆちゃん、なんか知ってるの?」
「へ、いや~、まゆわかんな~い」
パシャバシャバシャ、キュッ
勢い良く出していた水道を閉める。目の前の鏡に自分の顔が映る、なんかひどい顔。
どうしてだろう、あの夜の青桐先生と江戸川の姿が頭から離れない。
あの青桐先生の慈愛に満ちた笑顔、江戸川のはにかんだ笑み、自然に腕を組んで頭を撫でていた。あれは他人の距離じゃない、親しい者だけが出せる雰囲気だった。とてもじゃないが振って、振られた者同士には見えなかった。
この時ばかりは自分の視力の良さを恨めしく思う。
「あ~っ! 私らしくもない!! ウジウジ悩んだってしょうがない、速攻が私の持ち味でしょ!」
パシリと自分の頬を叩く。
「よし! こうなったら直接青桐先生に…………………………の前に春ちゃんに相談しよう」(ヘタレた!)
カラッ
ん、黒崎会長が戻って来た? 生徒会室の扉を少し開けてチョイチョイと私を手招きしてる。何事?
「春ちゃん、ちょっと、ちょっとちょっと」
手招きされるまま廊下に出ると黒崎会長が私にご相談があるとの事だった、手を引かれ屋上まで行くともじもじと言いづらそうに視線を泳がせる。あ~、これは鬼畜眼鏡関係だな、会長がこんな状態になるのは恋愛がらみの時だけだ、それ以外ではあれほど凛としてるくせに。
スーハーと深呼吸を繰り返した後、黒崎会長が小さな声で話し出した。
「ねぇ、春ちゃん。例えばだよ、本当に例えばなんだけど、青桐先生と江戸川が夜中に川辺で二人で寄り添ってなんかしちゃってたら、それはもう二人は付き合ってたりするのかなぁ?」
「はあ!?」
もうそれ例えばになってないでしょ、見たんか、見ちゃったんかその場面。
あんの~鬼畜眼鏡ぇ!!! 何してるんだ!!!
「黒崎会長! 先生の所に行くよ!!」ガッ
今度は私が黒崎会長の手を引いて、あの鈍感鬼畜眼鏡がいる南校舎に向かう。どう言うことか問いただしてやる!
「ちょ、春ちゃん!」
「あら、黒崎会長に赤城さん。どうなさったのそんなに急いで。生徒会の人間が廊下を走るものではなくってよ」
途中、桐生さんを発見した。よし、この際だ桐生さんも巻き込んでしまえ!
一人より二人、二人より三人の方が攻めやすかろう。
「桐生さん! ちょっと美術準備室まで付き合ってくれませんか!」
「えっ、鉄先生の所ですか? い、いいですわよ」
わたわたと手を引かれる会長と訳も分からず付いてくる桐生さん、そうして3人で準備室の黒い扉の前に立つとドアノブをぐっと握りしめる。
気分は警察24時のガサ入れだ、よ~し行くぞ~!!!
ガチャ!!
「警察だ、そこを動くな!!」
いかん、役に入り込んでしまった。
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