第17話 黒埼明日菜vs桐生美鈴1
準備室の扉を開けたまま入口で活動停止中(フリーズしている)の会長を避けて前に出る。
うん、状況を整理しよう。カウンターの上には、食べ掛けのナポリタン(良いねナポリタン、私好きなんだよ)と、完食されたと見られるお皿、それにサラダボウルとタンブラーが2つ。
そして、桐生さんの唇をナプキンで拭いてあげている青桐先生。ここから推理される状況としては、大方、先生に会いに来た桐生さんが昼食に誘われ、その時口の周りについたソースに気付いた先生が拭いてあげていると、そんな所か。
ん、桐生さんの動揺が酷く激しいな、まだ何かあるのか?
「やあ、丁度いいところに、黒埼会長と赤城副会長もナポリタン食べますか?」
この男は、この状況で何を言ってるんだ、なにも分かってないのかこの鈍感大王め?
私に微笑みかけるな、気まずいだろ!!
「一度ならず、二度までも抜け駆け……。ぐぬぬ、かくなるうえは……」
あ、会長が再起動した。
「美鈴さん! 勝負よ!!!」
バーンと桐生さんを指差し、啖呵を切る会長。格好良いけど涙目になってるよ、一杯一杯なんだね。
ところで、何で勝負するの?
「春ちゃん、秋ちゃんと夏くんを第2体育館まで呼んできて、生徒会と女子バレー部のエキシビジョンマッチと行こうじゃない!」
えっ、バレーって4人でやれないよ、あ、青桐先生も出場さすのか。それでも5人じゃん、うちの学校の女子バレー部ってインターハイ優勝してんだよ、その面子じゃちょっと無茶じゃないかな。
でも、黒埼会長だからなぁ、勝算0%じゃない所が凄いけど、たぶん桐生さんのホームであるバレーボールで負かそうって意地をはってるんだ、しょうがないなぁ会長は、付き合ってあげるか。
「なっ、バレーで勝負って舐めてますの! ……わかりましたわ。お受けします」キッ
おお、桐生さんの目の色が変わった、覚悟を決めた女の目だねあれは。バチバチと視線の火花を散らす二人の美少女、迫力が違うね。怖いよあんた達、まるで虎と狼だよ。
わぁー、女帝と女王の対決が始まっちゃたよ。
何よ先生、えっ、こんなの文化祭プログラムに有ったかだと、ふざけるな、ちったあ空気読めよ、この鈍感鬼畜眼鏡!!
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桐生美鈴がツカツカと体育館を歩く、バレー部のスパイクアウトのイベントの方は一息ついた感じで部員達が談笑している。ちょうど目当ての後輩が居たので声を掛ける。
「戸田さん、試合よ。住之江と若松、後は尼崎と丸亀も呼び出してちょうだい」
「えっ、レギュラー組全員ですか?」
「そうよ、急いでくださる」
「は、はい!」
相手は運動神経の化物 黒埼会長、油断なんてしてたらきっと負ける。けれど、黒埼会長、バレーとバスケットでは勝手が違いますわよ。
鉄先生への私の気持ちがはっきりした以上、ここは絶対に負けられませんわ!!
いつになく闘志が湧いてきていた。
ピンポンパンポ~ン
丁度、校内アナウンスがスピーカーから流れる。
「あ~あ~、テス、テス。え~この後、午後2時より第2体育館において、生徒会と女子バレー部によるエキシビジョンマッチを行います。女帝黒埼生徒会長と黒の女王桐生美鈴の、夢のドリームマッチだ!! 見逃したくなければ、全員第2体育館に今すぐに集合ォーーーー!!!!」
「ブッ。誰が黒の女王よ!!」
ポニーテールを縛っていた手が止まる。このノリノリのアナウンスは白井さんですわね、何を考えてるのかしらあの子?
文化祭実行委員本部 実行委員長李奉先。
「黒埼会長がエキシビジョンマッチ? そんなの聞いてないぞ、文化祭最終日のサプライズ企画か?」
茶道部野点会場、江戸川まゆ。
「明日菜さんと桐生さんが?……はっ、鉄先生が出場するかも!!」
「大村、後は任せます。私は急いで第2体育館に行かねばなりません」
「ちょ、部長。今日もさぼりですか~~。ずるいです~」
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