悲しむ時間がないほどの

居なくなって気づく

居なくなるという事実

会えなくなるという現実


何度繰り返しても

この発見を学習しない


十二の月でリセットされる周期が

昨日と同じではないことは

成長とともに理解しているのに

同じような毎日にあくびをする


動き出せない のんびり屋

いいわけしながら呆れてしまう


自分の中の 他人の価値

平等じゃないのは当たり前で


そんな自分を

冷たいヤツだと怒るかい

じゃあきっとあなたはカミサマだね

そう 睨んでしまいそうになる


お小遣いをくれた近所のおっちゃんが

いまでは自分の順番になって

笑って話してた友人が

会えば誰か分からない


ロールプレイに溶け込んだ

いつしか自分じゃない自分


おっちゃんは

自分と同じような色のトレーナーを着てた

おっちゃんは

自分と同じ店のらーめんが好きだった


笑い皺が刻まれて

笑ったまま眠っている


自分にはない

鏡を見れば 涙が筋を描いている


同じような道を辿っていると

自分を誤魔化す対象に

安心させる 諦めさせる 写し身に

似た者同士は 押しつけか


おっちゃんを知るためには

自分にも笑い皺を望むなら


別れにも 気づいた愚かさに嘆くのも

いまだけ この手を合わせる間だけ

瞑った瞼を開いたら


悲しむ時間がないほどの

あなたを探す 日々になる


笑顔でいられたその意味を

ただ自分が知るために


またがあるならその時に

自分の皺を見せるため



悲しむ時間がないほどの――






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