「何回も」を知らない弓矢は、その一瞬を引き絞る

嘲笑を切り裂いて

誰かが定めた常識を

誰かが定めた正解を


守り殉じることだけを


私の価値にしていた今日を

右向け右に安堵した夜を


――ため息吐くのはなぜなのか



紅く染まった山々は

終わりが迫り 恐れしまう

暗闇に輝く星空は

儚き命に 息すら忘れる


休まるはずの寝所の温もりが

無防備すぎて怖くなる


ソファーに座り目を瞑る

その不安定さに救われる


私が 壊れかけな心というのなら


一度きりの生と同じだと

そう叫んではいけないのか



言葉にすれば

はりついたような笑みが待つ

言葉にすれば

必要のない励ましに火傷する


その嘲笑を切り裂いて


繰り返される 二度とない今日を生き

私は私だと


脆くとも ないよりはいいと


いまを頷く






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る