過去3 始めてのヒューマンテイム 

 新たなスキル【ヒューマンテイム】を手に入れた俺は、さっそくその力を試してみる事にした。


 俺は朝一で家を飛び出し、村の中心部にある村長の家に向かった。

 家の裏手に回り、鶏に餌をやっている女の子に声をかける。

「おはよう、ミア!」


「あらぁ? こんな朝早くからどうしたのぉ、リュート」

 鳥に餌をやっていたのは村長家の長女、ミアだった。年齢は15歳。


 トロンとした目が印象的な優しい子で、俺はミアの事が前々から大好きだった。

 というか、この村に住む男はみんな、一度はミアが好きになる。

 この子が俺の嫁になってくれたら幸せだろうな。

 そう思わずにはいられないような子なのだ。だから――


「テイム」


 俺はミアの手を掴み、テイムの呪文を唱えた。 

 俺が最初に操る相手はミアがいい。そう、決めていた。


 さあ、どうなる……?

 俺を固唾を飲んでミアの様子を見守った。

 ヒューマンテイムの効果やいかに――だが。


「なぁに? リュート、わたしと遊びたいのぉ?」


 ミアの様子は、全くいつも通りだった。

 しゃがんで俺と目線を合わせ、「んー?」とにこやかに首を傾げている。

 いつも通りだ……いつも通りの優しいお姉さんだ……。


「…………」


 俺はひどく落胆した。

 なんだよ、このスキルパチモンじゃん……。

 もしかして昨日の夜の出来事は、全部俺の夢だったんじゃ――と、その時。

 俺は、ふと気が付いた。


 ミアの様子が、どことなくおかしい……。

 どこが、と聞かれると困るが……強いて言うなら目だろうか。


 ――あなたを全面的に信頼しています。

 目が、そう言っていたのだ。


「ねえ、ミア……」

 俺は勇気を出して命じた。

「服をたくしあげて……おっぱい、見せてくれない?」


「おっぱいの見せあいっこがしたいのぉ? うん、いいよぉ」

 

 ミアはあっさりと頷いて、上衣の裾を掴んだ。

 そして――


「――――」

 次の瞬間、俺は神秘的なものを見た。


「はぁい。いっぱい見てねぇ」

 

 ぶるんッ、と勢いよくまろびでたおっぱいの迫力はすさまじかった。

 水浴びをしている女の裸を遠目からのぞいた事はあったが、こんな間近で裸を見たのは始めてだ。

 

 ミアは決してアバズレじゃない、むしろ貞淑な女だ。

 村の男達がどれだけアプローチをかけても決してなびかず、乙女の純血を保ち続けていた。


 ついでに言うと、ミアは近々、隣村の村長に輿入れする事が決まっている。

 嫁入り前の大事な時期に、他の男に胸をさらすなんて絶対にありえない事だ。


 つまり……本物って事だ。

 俺が昨日見た夢は。

 女神に貰った力は。


 ヒューマンテイムの力は――紛れもなく本物だ!!



「……ッ!」

 俺はごくりと唾を飲み込んだ。

 このスキルがあれば、俺は。

 

 ――王家の血筋だって乗っ取れる……!


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