11.4

 IGBT素子VVVFインバータ制御


 4000系電車はこれと,レーザー溶接・つや消し仕上げを用いて滑らかな光沢こうたく

たたえた,オールステンレス車体を持っているのに対して,台車から聞こえてくる音が釣りかけ駆動方式のものであることが特徴だ。




 この日,おう歴1018年8月24日。双瑞そうずい帝国のザロス山脈を越える,南到なんとう本線旧線のイザヤ峠で行われた,ドクダミ庁の演習に参加する人員を運ぶ臨時列車へ充当された車両のうち,シスリバー県の八皓はじろ車庫に所属する量産車0番台,Nsd13編成(本ハジ)は,そこへ勤務する乗務員二名, ロジャー·今泉運転士と雉くんの手で,その日のうちに回送8061列車として八皓車庫へ戻る事になっていた。

 その途中で旧線の定期列車3本を待避するべく,アイロンフォレスト信号場の下り副本線に停車したところまでは,運転士こう表どおりだった。停車中でも,(大文字のTと似た形)両手

ワンハンドルマスコンへ手を添えるロジャー運転士が,いったん左手を離し,乗務員室のすぐ後ろにある側扉のみを手動で開閉できるように,スイッチを切り替える。

 そして雉軸んは,デハ4073の側扉を手で開け,乗務員用プラットホームに降りた。


 

 双瑞国鉄の列車ならば,運転士が乗務員室扉から出て,後続列車の通過を監視するのだが,彼らの場合は運転士とStoker(ストーカー)の二人一組でワンマン運転をするという理由で,通過監視はストーカー用の運転士行路表が割り振られている乗務員の担当だった。そして狭いホームのフェンスへ近付いた時に,雉くんは鉄道用地の外,木々の間から妙な気配がするのを感じた。



 「雉ん,ちょっといいか」

 「なんでしょうか,ロジャーさんも妙な気配を?」

 「ああ,落とし窓を細めに開けただけで入ってきたな。それに魔導コンパスの針が南を向いていたから,偵察してくれ。運輸指令・参謀本部への報告と通過監視の方は,こっちで代わりにするからさ,何かある前に急げ」 

 「了解,お願いします。そしてすぐに向かいます」

と答えてから,ふと耐火フードを持ち込もうかと思い付き,車内のロングシートに数着置かれている新品のうち1人分を両肩にかけ,雉くんはアイロンフォレストへと足を踏み入れた。

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