第28話 本物の愛 【大幅書き換え、ほぼ新エピソード】

 

カルミーさんは気高く強い。


いつもそう思っていた。


強さとかじゃない、心が誰よりも強い…今でもそう思っている。


だが、今のカルミーさんは捨てられた子犬のように弱弱しく見える。


当たり前の事だ...


あの状況で誰が心が折れないというんだ。


恐らく、勇者であっても英雄...いや他の誰であっても心は折れる。


「あの…リヒト…」


多分、こうなることをルミナスさんは見越して俺を送り出したに違いない。


俺の中で1番好きなのはルミナスさん…これは間違いない。


だが、カルミーさんも俺は好きだ。


俺は、凄くチョロいのかもしれない。


決していい加減な気持じゃなく『この2人は命より大事』そう思えて仕方が無い


幼馴染は多分今でも『命の次』位には大切なのかも知れない。


だが、この二人に対する思いとは全く違う。


『ルミナスさんごめんなさい』


今だけはルミナスさんを忘れよう...俺は結婚指輪を外すとポケットにしまった。


◆◆◆


「カルミーさん、俺を引き留めてどうしたんですか?」


「あのね…リヒト私…」


引き止めた理由は解っている。


今のカルミーさんは不安で仕方が無いに決まっている。


自信満々な面影はひそめ、体がガタガタと震えている。


「カルミーさん、俺、カルミーさんの事凄く好きです。愛しています…本音で言うなら…初めて会った時から好きでした…だから、そんな目で見ないでください、歯止めが利かなくなります」


「リヒトが私を抱きたいなら、自由にして良いよ…ゴミみたいな体だけど…こんなおばさんで良いなら、自由につかって…あははっオークの使い古しだから無茶しても良いから…ね」


「それなら要りません」


「あははっやっぱり…同情で慰めてくれていただけじゃない…抱けないんだ…あはははっ嘘つき…同情は嫌だ、そう言った筈だよ…当たり前だよね、おばさんで醜い豚みたいな女だもの…沢山の男に抱く価値が無いと言われ暴力を振るわれたゴミみたいな女、ケビンの手垢のついた中古女…オークの苗床女なんて…誰も欲しがらないよ…それなら憂さ晴らしになってあげようか…好きなだけ蹴っても殴っても…良いよ…」


「カルミーさん…馬鹿なの」


「私は馬鹿だよ…これで満足? リヒトも罵倒したいんだ!…良いよ好きなだけ馬鹿にしなよ…私はそう言う女なんだから、なんの価値も無い汚い女なんだから!」


「だったら言うけど…俺は好きだ!愛している…そう勇気を絞って言ったのに…その返事が『私が抱きたいなら、自由にして良いよ』なんですか…返事になってないでしょう?」


「私は、それに返事できないよ…こんな醜い、汚れたこんな体なんだから…」


「そうなんだ…俺カルミーさんに振られちゃった…本気で好きだったのに…」


俺はわざと悲しそうな顔をし…涙ぐんで見せた。


「リヒト…困らせないでよ…私だって…その好きだよ…だけどそれを言える資格は私にはない…無いんだよ」


「カルミーさんも俺が好きなんだ…なら問題ないじゃないですか…しようか…」


俺は自分を殺して冷たく言い放った。


そして服を脱ぎ。カルミーさんの横に横たわった。


「カルミーさんは俺が好きなんですよね…なら頑張って俺を気持ちよくしてください」


「解った…リヒトは…性処理道具が欲しかったんだね…いいよ…してあげるよ」


片手片足で、悲しい目をしながら、俺にノソノソと乗ってきた。



◆◆◆




なんでこんな汚い女相手にリヒトが優しくしてくれるのか解らない。


他の男に気持ち悪いと言われ、オークの巣に放り込まれ苗床になっていた女。


そんな私をリヒトは愛を囁きながら抱き続けた。


悲しい目をしてリヒトの体に乗った時は凄く惨めに自分が思えた。


それなのにリヒトは...


性的な意味じゃない...まるで宝物のように優しく、まるで父親が娘


を愛おしく抱きしめるように私を抱きしめ愛を囁き続ける。


「カルミーさん、愛してます...」


「やめて...同情は要らないよ、自由にして良いんだから、無理してそんな事言わなくて良い...雌ブタみたいなババアなのは自分が良く解っているから...こんな体でしたいなら幾らでもしてい良いんだから...」


だけど、リヒトは動かない。


私をだた力強く抱きしめているだけだった。


「そうは? なんだ、それじゃ、この胸もこのおしりも全部俺の物でいいんだよね…」


「...リヒト?ちょっと、リヒト恥ずかしい…恥ずかしいよ…私おばさんで中古のゴミみたいな」


言葉を遮るように、いきなりキスされた


「なんでそんな事、言うの?カルミーさんは綺麗で素敵な女性だと思う…凄く美人だと思う…否定したいならちゃんと言って…」



「私はおば」


私が否定的な事を言おうとするとリヒトがキスして邪魔をしてくる。



「世界で一番セクシーだよね…胸もお尻も大きくて可愛い、そう思わない」


「違う、私は違う、また...」


キスをして話の邪魔をしてきて話せなくされる。


「否定しないんだ…やっぱり、自分でもそう思っているんじゃない?」


「違う私はオバ...…キスで口を塞ぐから…話せないじゃない!」


私が話そうとするとリヒトの唇で口が塞がれる。


「だって酷くないかな?俺はカルミーさんが大好きで愛しているのに…否定して…本当に綺麗だと思うから言っているのになんで否定するの...」


「だって私はおばさんで汚い! また」


「それ聞きたくないから…」


リヒトは私を更に強く抱きしめる。


「凄く綺麗だ…可愛いよカルミー」


「リヒト、お願いだから聞いて...私はおばさんで苗床女だったんだ...汚いゴミみたいな女なんだ...体だって見ればわかるだろう、こんなに崩れて...グスッもう真面じゃない」


「カルミーさんにババアじゃないし、俺にとっては凄く綺麗なに見えるよ」


「そんなわけ無いじゃない!オークの苗床になって犯され続けていたんだ、リヒトだって見ただろう?私のは凄く汚ない...また言わして貰えないの...」


私がが否定的な事を言おうとしたらスグにキスで口を塞ぎにくる...ズルい。


◆◆◆


私はずるい女だ…


私にはすがる資格なんてないのに…リヒトの袖を掴んでしまった。


若くてかっこ良い男の子がこんなゴミおばさん掴まされたら『可哀そうだよ』それは解っている。


だけど、リヒトなら同情してくれるかも知れない。


同情しているから助けてくれるかも知れない。


そう考えたんだ…最低だよ私。


冒険者の矜持なんてもう何処にもないよ。


リヒトはこんな私に好きだ、愛している…そういう。


多分、当人は解っていないけど…絶対同情からにしか思えなかった。


それは罵倒されるより…辛いし私の心がその度抉られた。


殴らている方がましな位に辛い…


嘘なんて言わないで良い…抱きたいなら、ただ抱けば良いんだよ。


それなのに...優しく抱きしめ、愛を囁くだけ...


リヒトは優しい...私の境遇に同情してくれているだけだ。


きっと只の同情それしか考えられない。


もし、私がこんな事に巻き込まれずに生活していても...


こんな若くて綺麗な男の子が私なんて求める筈はない。


大きなお尻に大きな胸...お腹こそ、へこんでいるがオークと言われても可笑しくない。


あんな状況ですら誰も『犯そうとしない女』


ケビンは冒険者として稼いでいる私を金蔓にしたくて妻にしただけだ。


今思えば、ケビンが私を抱いている時、目を開けていた時は無かったわ。


きっと、他の女を思いながら抱いていた...そうだ。



解っているわよ…リヒトは優しいから同情して優しい言葉をかけてくれる。


だけど…それが辛い...


泣きたくなるほど辛いんだよ…やめて欲しい。


だけど、こんな事を思う私は最低だ…


私はやめて欲しい…だけどリヒトはやめてくれない。


あくまでも私が好きだと言い張る。


多分リヒトは気がついていないんだ...


もしかしたら…自分が同情していることに気がついていないの。


ならどうしたら良いの...


幾ら私が否定しても聞いてくれない...


ひたすら私に愛を囁いてきて...私が否定するとキスで口を塞いでくる。


ズルい。


一度抱かせてあげれば辞めてくれるのかな。


オークに犯された女、抱き心地なんて良い筈はない。


多分、一度抱いたら、きっと私がゴミみたいな女だと解かるよ。


さっさと抱けば良いのに...ただ優しく抱きしめているだけ...


私が否定的な事を言おうとするとすぐにキスで口を塞ぐんだから…本当に困る…


何考えているのか解らない。


リヒト、貴方はどうしたいの...


ただひたすら抱きしめられて、私が幾ら否定しても「好きだ」「愛している」「綺麗」を止めてくれない。


否定しようとするとキスで塞がれる。


おかしい...体が火照ってくる...体から汗が噴き出て来ているのが解る。


私...なんだかおかしい。


急にリヒトが真剣な顔になった...


「ようやく笑ってくれた」


嘘…私、笑っていたの…


「え~と、そう?」


「うん、凄くかわいい…」


「私はオバさんだか...駄目…もうその手は食わないわ」


「残念…」


流石にあれだけキスされたら…タイミング位わかるよ。


「もう通用しないからねー-」


「笑ってくれたから、もうしないよ…それで、少し真剣な話をしたいんだけど、聞いて貰えるかな?」


「解ったわ」


リヒトは何を言いたいのだろう…


「ああいう行為って心のキャッチボールだと思うんだ」


キャッチボール…なんだろう…まぁ良いや。


「それで?!」


「ちょっと待ってね」


そういうとリヒトは私を更に強く私の方に引きつけてきた。


「ちょっと嫌だ、今、顔を見られるの…凄く恥ずかしい…いや」


今の私はきっと...見られたくない


顔を背けたのに...逃がしてくれない。


「俺の顔をみて...どう?」


なんでそんな顔しているの…


「いやらしい顔してる…」


嘘…うれしいそうな顔している…私なんかを抱きしめてなんで...


「そこは『幸せそう』とか言って欲しいな…だけど嫌な顔していないのは解るよね!」


「たしかにそうだけど…どうして...」


リヒトが何を言いたいのか解らない。


「あのさぁ、大体男も女も汚い所は沢山誰でもある...普通なら触りたくない場所なんて沢山あるよ...」


「…知っているよ…」


嫌というほどオークで経験したから...


「だけど、例外がある。好きな人に気持ちよくなって欲しいし、好きな人の気持ち良さそうなしぐさや顔を見たい...そう思うとそれは気になら無くなる…誰かに言われて嫌々するんじゃなくて『相手を思いやり、相手に気持ちよくなって貰いたい』お互いにその気持ちをぶつけ合うのが愛の営みだと俺は思うんだ…そう言う思いが無ければ、男だって女だって臭くて気持ち悪い場所ばかりだよ…」


「リヒト…」


「カルミーさんを否定した人たちはカルミーさんを元から好きじゃ無いから関係ない...だけど、美少女が多いエルフだって嫌いな人は結構いる...俺から見てカルミーさんは好みだから、それは関係ない。オーク相手には流石にそういう抱かれ方して無いんじゃないかな…」


「…ない」


私にとってのあれはただ苦痛しかなかった。


ただ悲しくて惨めで…辛くて死にたくなるような苦痛な時間…それしかない。


「それじゃ、俺に抱きしめられてどうだった?っきから耳まで顔を赤くして汗だらけだけど?」


「うれしかったかも知れない…好きだとか愛しているなんていうから…心臓がとまるかと思ったよ」


「それが多分、愛の営みには必要な事なんだと思う…今までカルミーさんが出会った男はカルミーさんの魅力が解ってないんだ」


「何が言いたいの?」


「つまり…カルミーさんは今まで本当にの愛の営みをした事がないんだよ…俺はカルミーさんが大好きだし…愛しているから…その処女(はじめて)を捧げてくれませんか」


「リヒト…あんた馬鹿なの」


本当に呆れた。


凄い屁理屈だと思う…


だけど、さっきまでリヒトが抱きしめてくれた行為が、本物の愛だと言うのなら…確かに今までのは違う気がする。


何もしないでただ抱きしめられていて愛を囁かれるだけで...汗が吹き出し顔が赤くなる。


「そう…かな」


「良いよ…リヒトがそれで良いなら…私の処女あげるよ…なに言わせてるのよ、良いおばさんに…馬鹿」


「ありがとう」


なに嬉しそうな顔をしているのかな…


こんなおばさんに鼻伸ばしてスケベそうな顔して…


負け…私の負け…負けだわ


だけど...一体何をすれば良いのよ...


◆◆◆



今、リヒトは満足したかのように私の横で眠っている。



始まってみたら…凄いわ。


お互いの体を貪るような関係


こんな事、私はした事が無い。



本能が楽しい、嬉しいっていってくる…体が嬉しくて熱くなってくる…リヒトがするからそれ以上の事をしてあげたくて…何処までも激しく淫らな行為をリヒトにしていた。


嫌々するんじゃなくて…喜んで自分からする...こんなの他人がみたら淫乱にしか見えない。


だが、そんなのは関係ない…


これが本物の愛の営みだというのなら…今までのは全部粗悪な屑だ。


今まで私を本当に愛した人間なんて居なかった、そして私も誰も愛していなかった。


そう思ってしまう...


いつまでも終わらない永遠に続くかと思うような快感。


相手がリヒトだから此処までの事が出来る。


『なんだ、あいつ等、私にとってどうでも良い奴だったんだ』


どれだけ嫌われようと気にならない。


ただ一人リヒトが私を好きならそれだけで良い。


わたしきっと…リヒトの為ならなんでも出来る。


もう駄目…本当の意味で…私はもうリヒトの物になったんだ…



「リヒト愛している...本当に心から愛しているわ...」


私はリヒトの腕の中に潜り込んで眠った。


きっともう悪夢は見ない...


◆◆◆


気がついたらもう朝か…


横でカルミーさんは満足したように寝ている。


こんなのは、本物の愛じゃない。


カルミーさんの傷ついた心につけいっただけだ。


だけど、これしかなかった…


最初は偽りかも知れない…だけど、俺は本当にカルミーさんが好きだ。


絶対に幸せにするから許して欲しい…軽くキスをしてドアからでたら…


目に隈を作った般若のようなルミナスさんがいた。


「随分お楽しみでしたね…」


「ああっ」


「うふふふ冗談よ…昨日はカルミーに貸してあげたけど、今日は私の番だから…頑張ってね…うふふ…朝食つくるわね」


今日も徹夜決定なのかな...眠い...



※R18のシーンをキスに置きかえ、物語をすこし変えてみました。
















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