第33話 39度のとろけそうな日ですわ!
ジリジリジリ
アスファルトからムワリと強烈な熱気が立ち昇る。
「あっついですわ〜、くっそあついですわ〜」
信号で停まるエリカのくまもんモンキー。
トラタタと走ってる時は風が当たるのでまだマシなのだが、信号待ちではエンジンとアスファルトの熱が上に昇ってきて洒落にならない熱さだ。心なしか自慢の縦ロールも熱でダラけているようにも感じる。
流石に耐えられなくなったエリカは、バイクを道端に停めて通り沿いの駄菓子屋に飛び込んだ。
グビ、グビリ
「ぷっふぁ〜、生き返りますわ!やっぱり夏は冷やし飴ですわ!」
キンキンに冷えた瓶を片手にスマホで今日の天気を確認しようとする。
「
そりゃ暑いわけだと、冷やし飴をゴクゴクと飲み干す、それを駄菓子屋のお婆ちゃんがニコニコと見ている。
今エリカが飲んでるハタ鉱泉のひやしあめはレモン水を飲んだような爽やかさの後に、はちみつのまろやかな甘み生姜の風味がほんのり感じられとても美味い。
この冷やし飴、太平洋戦争前は関東でも飲まれていたそうだが、空襲で製造業者が廃業してしまい空襲被害が比較的少なかった京都・奈良の業者さんは生き残ったため関西ではメジャーな飲み物となっている歴史がある。もうちょっと全国で売ってもいいんではないだろうかと思う。
エリカが駄菓子屋のお婆ちゃんと談笑していると店先の道路で1台の高級車が止まった。チカチカとハザードを点滅させると後部座席から日傘を開いて上品そうなマダムが降りて来る。
「げげっ!お母様!」
「エリカさん、西園寺家の娘とあろう者が公衆の面前で駄菓子屋の食べ物など…」
冷ややかにエリカを見つめるお母様、それだけで若干気温が下がった気がする。
「いや、お母様、これはこれで大変美味しゅうございまして、…飲みます冷やし飴?」
「はぁ、まったく、光一さんがエリカさんを甘やかして育てるから」
「いやでも、今日の暑さではこうして冷たい物でも飲みませんと熱中症になってしましまいますわ」
「でしたら車に乗ればよいじゃない、それよりちゃんと日焼け止めクリームは塗っているんでしょうね、西園寺家の娘が真っ黒クロスケでは恥ずかしくってよ」
「ちゃんと塗ってますわ、でも今日は
「あら、そうなんですの?ではひらパーも暑そうですわね」
「はい?」
「だから、ひらパーお兄さんも暑くて大変ですわねと」
「はぁ、お母様ひらパー兄さんを知っておりますの!」
「当たり前ですわ、岡田君はひらかたパークの園長さんですわ」
「……お母様、意外とミーハーだったのですね」
「白い巨塔」の財前様や「燃えよ剣」の土方様を見てもそう言う事ができますの!」
ジャニーズなんかに興味のないエリカだ当然ドラマなんか見ない。「燃えよ剣」は見たがエリカは新撰組は斎藤一推しなので意味はない。
「岡田君なんてジャニーズ所属のお笑い芸人ですわ!なんですの超(スーパー)ひらパー兄さんって!あれこそ、ブラマヨの小杉さんの後を継いだ芸人の証拠ですわ!」
「ぐぬぬぬぬ、由緒正しい日本最古の遊園地ひらかたパークになんて暴言を、私なんて年パスまで持ってますのに……」
「えっ、ひらパーに年パスなんてありますの?」
驚くエリカにお母様が言い返す。(ひらかたパーク年間パスポートは20,000円で売ってます、お得ですよ。ちなみにTDLは今は売ってないですが68000円と2園共通が99000円でしたね参考までに)
「エリカさんの推している坂田利夫なんて思いっきりお笑い芸人のくせに!」
「はぁ?あの方は笑のアーティストですわ、若手芸人の岡田君と一緒にしないでくださる」
「きぃー、岡田君の方が歌と演技で本当のアーティストですわ、芸人じゃないですわ」
「世間では二刀流とかが騒がれる昨今ですが
「「ぐぬぬぬ」」
いつのまにか白熱するエリカとお母様。あれ、なんの話をしていたんだっけ?
カシュ
「まぁまぁ、二人ともそう熱くならずにこれでもお飲み」
「「ありがとうございますですわ」」
駄菓子屋のお婆ちゃんに綺麗に揃ったお辞儀をする二人、こう言う所は親子である。
ゴキュリ
「あら、美味しいですわ」
「でしょお、暑い夏にはやっぱり冷やし飴に限りますわ」
「…」
何を思ったのか突然踵を返すお母様。
「では
「お母様、今度一緒にひらパー行きます?」
「……考えておきますわ」
バタム、ブロロロ
エアコンの効いた快適な後部座席で外を眺めながらニマニマするお母様。
「エリカさんとひらパー♪ 何を着ていきましょう」
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