第18話 伊集院静香様ですわ!
私の憧れの人はいつもすぐ側にいる。
でも、絶対に手に届かない。
島津の傍流として鹿児島で江戸時代から続く我が伊集院家は、地元では名家として知られている、私はその伊集院の正統な後継者として生まれ育てられてきた、私が中学の卒業の時期に父が大阪で始めた事業のために神戸に移り住むことになった。
高校は三つ星学園高等部、父が懇意にしている西園寺家ゆかりの高校に通うことになった。
登校初日、送迎の車から降りた私は後ろに延々と続く車列をなにげに眺めていた、噂には聞いていたが規格外の学園だと思って驚いてしまった。
「まるで交通渋滞ですね、日本中の令嬢や御曹司が通っていると言うのも、あながち嘘ではないですわ」
その車列の中にあって一際キラキラと黒く光るリムジンが送迎ロータリーに横付けされる、
次の瞬間、私の中で衝撃がビビっと走った。
「なっ、お姫様……」
絵本の中から出てきたようお姫様、腰まで伸びる艶のある黒髪がフランス人形のように縦ロールにセットされてバネのように上下に揺れている、堂々と前を向く瞳はとても涼やかでとても力強い、学院の制服では隠しきれない抜群のプロポーションで、歩く様はまるでモデルがランウェイを歩いているのを見ている錯覚に陥った。
「きゃー、西園寺様よ!」
「あぁ、今日もお美しいわぁ~」
彼女を見て騒ぐ生徒もいた、有名人なのだろう、おかげで彼女の名をすぐに知る事が出来た。
(エリカは幼等部の頃から通っているので顔と名は知られている)
「西園寺…様」
キラキラとお姫様オーラを振りまきながら玄関に歩いて行く西園寺様を、熱に浮かされているように見送った。
入学式を終え廊下に貼り出されているクラス分けの表を覗き込む、私はB組、彼女の名は…あった!…残念、A組だ、一緒のクラスにはなれなかった。
次の日。
この学園の生徒は必ず部活に入らなければならない決まりがある、習い事のある人も多いのにどうしているのだろうと思っていたら、昨日仲良くなった綾小路様が「あくまでも社交の場でそんな真面目に部活している人はいない」と教えてくれた。それなら自由に選べるか、中学の時みたいにまたバレー部にでも入ろうかしら、ハッ!西園寺様は一体どこの部に入られるのかしら?
「そうそう伊集院様、知ってらっしゃる、この学園にはお嬢様部がありますのよ」
綾小路様が考え込んでいる私に話かけてくれた。
「お嬢様部?それは一体何をする部なんです?」
「私も先輩から聞いた話ですが、放課後にサロンでお茶会や音楽、読書を楽しむらしいですね」
「は、はぁ?」
なんですのソレ、意味がわかりません。茶道部、音楽部、文芸部?
「それに多分、今年の部長はA組の西園寺様になりますわ!」
「西園寺様が!えっ、1年生ですのに!」
放課後、綾小路様と一緒にお嬢様部の部室に見学に行く。幸いな事に私達はお嬢様部に入れる条件を満たしていた。なんちゃってお嬢様では入れない格式高い部だったのだ。
「ごきげんよう」
「「あ、ご、ごきげんようです!」」
部室?に入ると優しそうで綺麗な先輩が挨拶してくる、うわぁ、こんなに自然にごきげんようって言える人初めてかも、本当にお嬢様だ。
「見学の方ね、とは言っても今日は新学期の顔合わせと…」
カチャリ
「ごきげんようですわ」
「「「あっ」」」
西園寺様が部室に入ってこられた。私達の相手をしていた先輩が少し慌てる。
「貴女達ごめんなさいね。ちょっと席を外しますね」
先輩が一言断りを入れて早足で西園寺様の方に向かう、私と綾小路様はそれをじっと見ていた。
「お待ちしておりましたわ、西園寺様。先日お電話致しました部長の吉祥院です」
「本当に
「ふふ、学年や歳なんてなんの問題にもなりませんわ。この伝統あるお嬢様部になにより必要なのは格ですから」
西園寺様が部室?にいる先輩達と私達を見渡す。先輩方はワクワクと期待を込めた目で見つめている。
「………わかりましたわ、僭越ながら部長を務めさせていただきますわ」
「「「「ワッ!」」」」」
湧き上がる室内、拍手が鳴り響き、私も綾小路様もつられて拍手してしまった。
新入生がいきなり部長になった瞬間に立ち会ってしまいました。
「そうですわね、皆様にご挨拶くらいしないといけないわね」
コツコツコツ、カッ!
西園寺様はそう言うと部屋の奥まで歩くと振り返って、笑みを見せる。あれ?まるでスポットライトが当てられているように
「皆様ごきげんよう、只今部長になりました西園寺エリカですわ!」
パチパチパチパチパチ
「
重い一言、なんか感動してしまって綾小路様とその場で入部届を書いてしまった、この1年後にまさか自分が副部長になるとも知らずに。
カリカリ
「あら、伊集院様何を書いてらっしゃるの?」
「さ、西園寺様!なな、なんでもありませんわ、ただの日記です!」
「日記?
「そ、それは…」
続きますわ!
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