第7話 オッズによっては2000万円ですわ!
「やあエリカ、今日も美しいね、心臓がドキドキするよ」
エリカが返事をする前に自分で椅子を引いて正面に座るプラチナブロンドの王子様、どこかでパーティーでもあるのか白のスーツでその身を包んでいる、計らずもエリカの白のワンピースとはカップルに見えるほど相性の良い格好だった。
二人の場違い感が酷い、ここはパリのオープンカフェではない、コテコテの大阪、それもギャンブラーの聖地住之江競艇場だ。
「良い腕のお医者様ご紹介しましょうか?心臓血管外科でいいかしらそれとも循環器科?」
「ふふ、この病は君にしか治せないよ」
「……で、何故貴方がこのような場所に?しかもお一人でSPもつけずに」
「やだなぁ、好きな娘を見つけたからに決まってるじゃないか、それにエリカだって西園寺家のご令嬢なのに一人だろ、とても人の事は言えないんじゃないかな」
高貴なストーカー(エリカ談)が何かほざいてらっしゃる。
エリー王女と言い、ウィリアムズ王子といい、イギリス王室は子供の教育の仕方が悪いんじゃないだろうか、世界に名だたるロイヤルファミリーがあまりにも奔放で残念過ぎる。あ、女王様はとても品のあるお婆様でしたけど。
エリカは楽しみにしていたランチ?を邪魔されて少しイラッと来ていた。
「
「えっ?全然消せてないよ、皆んな見てたからすぐわかったし」
「う、嘘ォ」
ウィリアムズの言葉に周りに完璧に溶け込んでいると本気で思っていたエリカが衝撃を受ける。(いや君はお嬢様オーラ全開でダダ漏れだからね)
バッと周りに鋭い視線を向ければ皆慌てて目をそらした、そこ、勝手にスマホで写真撮らないでくださる!
「ほらね」
「ち、違いますわこれは貴方が来たからですわ!」
「えぇ〜っ!そんなことないよぉ、絶対にエリカが美しいからだよ」
「ハッ、これだからイケメンは、無自覚で困るのですわ」
「うわぁ、エリカがそう言う事言う、それよりここって何する所なのかな、さっきからボートが凄い速さでグルグルと走ってるけど」
「知らないで来たんですの、ここはボートで一生懸命に競争する場所で、美味しい物がまとめて食べれる場所ですわ!」
フフンと鼻息荒く腕を組むエリカだが、絶対に良くわかっていない、この場に居てもレースなんかまるで見てないのだから。
「へえ、確かに美味しそうだね、どれどれ」
「あっ」
パク
ウィリアムズがエリカの食べかけのどて焼きをサッと自分の口に咥える。
モグモグ
「本当だ、甘辛くて美味しい、こんな味は初めて食べたよ」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
エリカの身体から黒い覇気がブワリと湧き上がる。
「何、人の物を勝手に食べてますのぉ……」
「え、何で怒ってるの?こんなにいっぱいあるんだから1本くらい」
「色々食べようと思って1つづつしか買ってないんですのよ、損害賠償を要求します!」
エリカが立ち上がってウィリアムズをビシリと指差す。
「そ、損害賠償って、いくらぐらいかな、100、いや200万?」
「180円ですわ!1階の売店で同じものを買ってきてくださいまし!!でないと末代まで祟りますわ」
「い、Yes!すぐに買ってきます!」
エリカの覇気に負けて逃げ出すように駆け出す王子、お財布持ってるか?どて焼き(180円)はカードで買ったら
ウィリアムズ王子が5分もかからず戻ってくる、その手には商品が置かれたトレイを持っており満面の笑みだ。
はじめてのおつかいで成功した幼稚園児のようなドヤ顔をしている。
「おまたせ。はい、どて焼き、ついでだからイカ焼きってやつとフランクフルト買ってきたよ、食べる?」
「チッ、随分と早かったですわね、てっきり小銭が無くて困ってるかと思いましたのに」
「ああ、どこかの親切な人が案内してくれてね、そのうえ硬貨もお使いくださいってくれたんだ」
「……それって多分SPですわ」
キョロキョロと周りを見渡すがそれらしき者は見当たらない、完璧に気配を消している、もしかしてイギリスの特殊部隊か?
「どうしたのキョロキョロして?」
「なんでもありませんわ、それでは先程の蛮行はゆるし………………一味がかかってませんわ、60点です」
「えぇ〜っ!!」
頑張れ王子、エリカお嬢様は食べ物には意外と細かいのだ。
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