あとがき(ネタバレ)


 天弓のシュカを最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

 (ラストシーンは、表紙になっております。イラストレーターnao様に描いていただきました)

 

 王道のRPG風ファンタジーを書いてみたい、という軽い気持ちで始めたこの物語ですが、いかがだったでしょうか。

 作者は女性なので、エロエロハーレムが書けなくてすみませんの気持ちです。ジャムゥが可愛いので許してください。笑


 七色の魔竜巡礼を謳っておきながら、七色巡れなかったことを公式に謝罪いたします。

 本当は多くても12万字ぐらいでと思っていましたが、こんなに膨れてしまいました。

 結局ちゃんと巡ったのは紫と緑だけでしたね。わははは(笑ってごまかす)。


 前半から色々な伏線を置くのは私の癖です。

 まさか一話目からラスボスがいるとは、と思っていただけてたら嬉しいです。

 

 ラスボス、ラスボスと血縁関係にある剣聖、が最初のステップで。

 次に精霊王、そして意図して魔王を匿っていた風の精霊と、魔王本人。

 そこに至るまでに緑竜と交流することによって、この世界観をなんとなく掴んでいただけたらと思いながら書きました。


 竜の試練は、倒すだけでは面白くないので、音楽と舞を取り入れてみたりしましたね。

 青竜の試練でジャムゥが青竜に対して

「ウダカ。シュカなら、ぞ」

 と言っているのは、つがいを取られているという伏線でした。


 竜の試練といえば、最初に出てきた騎士団長ハンスのことを、覚えてくださっていて嬉しかったですね。

 絶対もう一回出すぞーと思っていました。

 まさか王女と結婚するとはですけど、ほどほどに尻に敷かれつつ良い王国騎士団を作っていくと思います。頑張れハンス。その傷、かっこいいぞ。


 このストーリー終盤でのキーは、なんといってもヘタレ宰相と氷の花嫁でした。

 そんな簡単にお互い一目惚れってするー? と少しでも首をひねっていただけていたら、成功です。そして好きになるきっかけってなんでも良いですよね。好きになった後が大事だと私は思うのです。

 

 ジェンダーレスとかダイバーシティとか言われている昨今ですが、『氷の花嫁』みたいな慣習って未だそこここに残っていると思うんですね。

 昔はそれこそ『人柱』『生贄』も当たり前にありましたよね。人命を捧げる代わりに何かを得るという因習。悲しいですがそれも人間の所業です。

 ファンタジーとなると人の命や、悪への葛藤を軽視しがちです。私はそのあたり、常に逃げずに書きたいなといつも思っています。


 

 キャラクターについて。


 ヨルゲンは、おっさん剣聖と言ってしまえば一瞬で終わっちゃいます。

 ロイヤルファミリーなんだけど型枠にはまるのが大嫌いで、剣を鍛えている内に強くなって。

 名声のためにとグレーン王族総出で勇者パーティにねじ込まれたのが、かえって正解だった人です。

 欲目当てですりよってくる女性陣に辟易へきえきしていたので、ウルヒという存在は目新しかったと思います。

 あとほら、男性ってどこかで母親像を追いかけますよね。本人も鬼ババアって言ってますが、お母様、めっちゃ怖い設定です。ウルヒも怖いですね。

 個人的にすごく好きな男性のタイプを詰め込みました。かっこよくて余裕があるけど一途な人。現実にはいません。大丈夫です、分かってます。笑


 イリダールはヨルゲンの対抗馬として出してみました。騎士服で黒い眼帯で葉巻ってやばいですよね。やばいです。(二回言う)

 もっと出したかったなあ~と思っています。ブラコン皇帝も。

 私の他の作品にヴァジームとヨナターンという同系統のイケオジ騎士がいるんですが。それぞれ大好きです。(名前の後ろから二文字目は伸ばすという法則を、今見つけてしまいました。)



 ウルヒ。姉御肌の精霊王。

 魔王ですら抱擁しちゃう懐の深さ。そりゃあヨルゲンも惚れるでしょう。

 爆乳設定をあまり活かしきれませんでした。喜んでいたのはジャムゥだけでしたね。すみません。笑

 ヨルゲンに裏切られた気持ちを持ったまま精霊王に就任して、ひとりで意固地になって頑張っちゃった部分があります。

 周りにもっと相談できていたら、精霊国アネモスはああいう結果にならなかったかもしれない。

 一方で、浸透していく新しい考え方(魔法教義)に表面だけ染まって、古くからの精霊信仰を都合よく否定して、利権だけ追い求める。そんなムーブメントも社会では目にします。皮肉を少しだけこめて書きました。よさげな上っ面だけ言ってくるんじゃねーよ、老害ども! です(私怨)。

 

 

 ジャムゥ。一言で言うと、ロリ魔王なわけですが。

 前までは人間たちの罪と欲を一身に体現するだけの存在=世界のことわりだったので、自我がありませんでした。

 シュカたちといることによって感情が育って、倫理観が身について、という風に成長を見守っていただけたらと思いました。

 まだまだ無垢なこどものようなジャムゥですけれど、シュカたちのことが大好きなので、きっと幸せに暮らしていくでしょう。

 アモンやカイムの他にもたくさんの魔族がいますけれど、出せなくて残念でした。アモン侯爵がチートすぎましたね。

 


 無窮むきゅうの賢者、ファルサ。

 こんなに悪い奴、今まで書いたことないです(当社比)。

 こじれにこじれまくっているエリート。承認欲求の塊。なまじ魔教連がうまくいっちゃったからいい気になっちゃったけど、本当は組織の中で実力を発揮する人だったんですよね。挫折したことがなくて、自分が一番優秀だと思っていたのに――なので、あっという間に狂ってしまった。

 

 彼の何が悲しいって、あんなに会いたがっていたシュカたちに、結局会えてないんです。うわー! 寒いっ! 笑

 自分は音石仕込んだり、ルミエラの中にいたりして散々一方的に見てるんです。永遠の片思い。ストーカー。泣けますよね。

 彼は勇者パーティに居た時からずっと孤独を感じていました。ヨルゲンとウルヒはなんだかんだイチャイチャしてるし。

 勇者は自分と同じように聖属性魔法が使えるどころか剣も使えて、一生『世界を救った』栄誉のもとに名が残る。自分は? となっちゃった。

 それでも、アナテマとポエナのように救われた子たちもいたことは、良かったですよね。きっと彼ら、元気にがんばってます。

 

 

 あ、音石といえば。

 これも道具としての伏線でした。

 ヨルゲンの浮気は、風の精霊カルラがウルヒをどうしても精霊王にしたくて……の嘘で。

 ウルヒはヨルゲンのことも深く愛していた。その時のヨルゲンは、ウルヒの人生を丸ごと受け止める勇気がなかった。

 精霊王になるべき人を辞めさせてまで自分の嫁に、てなかなかの覚悟ですよね。


 キャッキャウフフは、風の精霊たちのしわざです。

 だから何回もヨルゲン、「そうだったか~?」とやってますね。身に覚えがないんです。ほんとに。

 最初の方で裏切り行為を繰り返した、というのは『嘘』のことでした。奴が一途だったのは、作者が保証します。笑

 

 

 キース。

 正体に驚いていただけましたでしょうか。キースとキーストーン。我ながら安直すぎる。すみません。

 可愛い、とのお声がとっても嬉しかったです。猛禽類カフェ、行きたいですね。

 世界の核としてずっと孤独に在った。けれどもたくさんのものと繋がってはいる。想像してみたら、なんて寂しい存在なんだろう、と私は思いました。

 再び全ての竜石を集め、竜脈を繋げ直して世界の魔素が落ち着いたとしても、今度はきっと、シュカとジャムゥが側にいると思います。

 

 

 最後に、主人公のシュカ。

 生まれ変わった人って、こんな感じで達観してるんじゃないかなと思いながら書きました。

 IQが高い天才少年、という雰囲気です。

 元勇者ということを差し引いても、魔法学校では非常に優秀で魔法体系に造詣が深い。

 これがこうだから、きっとこれはこう、で全部繋げちゃえる人って、いますよね。

 だからファルサの在り方へ違和感を持った。そして前世の記憶を取り戻して、当たり前のように旅を決意しちゃった。

 それでもひとりの時はだいぶきつかった。ヨルゲンに会えて、本当に嬉しかったんだと思います。

 

 

 そんなこんなで作り上げた各キャラクターですが、なんとなく個性をつけるために

 

 ジャムゥはサンスクリット語

 ウルヒはマオリ語

 ヨルゲンはギリシャ語

 シュカはラテン語(+メジャーな魔法)

 

 あたりを使うようにしました。

 辞書で調べただけなので、色々ご容赦くださいね。

 


 色々語りましたが、実は書く時はあまり深く考えていないです。伏線を置く時もふわっとしてます。

 最後の方を書きだして初めて「えっ、そうだったんだ~レレかわいそうに」となってます。

 あなたと一緒に冒険ができていたらとっても嬉しいです。

 

 ありがとうございました。心から、感謝しております。

 

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