【実話】美少女戦士になれなかった私は聖母の笑みで断罪する

天城らん

1、漫画のような転校生

 これは、美少女戦士になれなかったとある少女の物語である。


   *


 私が小学五年生のときのことだ。

 2学期の終わり頃、父の仕事の関係で急な転校を余儀なくされた。

 青天の霹靂へきれきである。

 

 級友たちは私との別れを惜しんでくれた。

 特に、貴子ちゃんこと、たーこから言われた言葉が胸に刺さる。


「一緒に小学校を卒業できると思っていたのに、さみしいよ……」


 あと一年足りないだけで、卒業アルバムに載ることができない。

 その事実に気付くと、私はそれまでの5年間がなかったことのような気がしてぽろぽろと泣いてしまった。


「私もみんなとはなれたくないよぉ!」


 すると私を慰めようと友達が抱きついて来た。

 別れは辛いが、惜しまれていることがうれしくて切なくて、私はさらに声を上げて泣いた。

 

 そうして、学年末に開催されるお楽しみ会と同等のレベルの盛大なお別れ会を開催してもらった私は、12月の初旬に東京の八王子市から東北の福田市に引っ越した。



 慣れ親しんだ土地から離れることは、辛かったが私は気を取り直した。


(転校生って、漫画の主人公ヒーローみたいでカッコイイかも?)


 私はその頃、正義の味方の美少女戦士になりたかった。


 残念ながら、美少女とはいいがたいが、まあまあイケてると思う。

 正義感も強く、ケンカでも男子にも負けないし、絵や工作は得意だ。

 勉強はイマイチだが、地方の学校より遅れていると言うこともないだろう。



 別れの寂しさや不安を、漫画のような転校生を演じる期待に変えて、私は胸を膨らませた。 

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