第26話 悩みをソンジェに打ち明けるルーカス

「ある日、突然、変なことを言うようになったらしい」

と、ルーカスはソンジェに言った。


「両親は有力者で、そのままにしておくことも出来ず、留学したことにして無理矢理あの病院へ入院させたのだが、本人は納得していないから、すぐ脱走しようとする」


「お前が持て余すとは、すごいな」

とソンジェは笑いながら言った。


 実際、学生時代のルーカスのあだ名は「無敵のルーカス」で、ルーカスをやり込めるのは至難の技だったのだ。喧嘩も強いし、押しも強い。その上いつも、同じように無敵の存在だったソンジェと一緒にいるので、勝てる者はいなかった。


「すごく理路整然としたことを言うんだ。そして年齢に似合わず驚くほど博学なんだ。そして俺の知らないことまで、詳しく知ってたりする。だから手に負えない」


「それで?」


「お前、タイムトラベルを信じるか? あの患者は、自分をタイムトラベラーだって言うんだ。病院を抜け出すときは、違う時間に移動するから、誰にも気づかれずに外に出れる、って言いやがる」


しかしソンジェはそのタイムトラベルと云う言葉に、何か特別なものを感じた。

もし本当にタイムトラベラーならば、あの絵のことも説明がつくような気がした。

しかしまだ、我々の世界ではタイムトラベルは理論上のものであり、実現はしていない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る