第15話 ルーカスの患者が話したことは

 しばらく寝た後、ルーカスはやっと目をさまし、患者のことを詳しくソンジェに話した。

「この患者は、困ったことに、自分のことを別の世界から来た特別捜査官だと思い込んでいるんだ」

とルーカスは笑いながらソンジェに言った。

「そしてあちらの世界の凶悪犯がひとり、監獄から脱獄して、こちらの世界へ紛れ込んだと言うんだ。その凶悪犯を捜して、早く連れ戻さなければ、大変なことになる、って言って、今日も病院を脱走したと言うわけさ」

 ルーカスの連れの青年は、精神病を煩っているとはとても思えないような、利口そうな顔をしていた。そして神々しいまでの、不思議な美しさに満ちていた。

 

「彼がいた世界は、多次元宇宙のパラレル・ワールドと呼ばれる世界で、こちらの世界ではシャンバラと呼ばれている、とも真顔で言うんだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る