第7話 ヨハンとマイケル~心をつなぐもの
超がつくほどの売れっ子アイドルであるヨハンには、休みはほとんど無かった。
しかしそれでも年に何回かは、何日か続けて休みが取れることがあった。
その休みにヨハンは、いつも実家ヘ帰り、愛犬のカミーユと遊ぶのが常だった。
カミーユを抱きしめるとき、ヨハンはマイケルの大きな背中を後ろから抱きしめたときに、いつも感じていた不思議な癒やしと安らぎを感じるのだった。
愛犬カミーユはマイケルの代わりであり、ヨハンにとって自分の子どものような
存在だった。だからヨハンはカミーユを家にあった乳母車に乗せて、家の近くの海岸へ連れて行ったりもした。
季節外れの海は、人影もまばらで、誰もヨハンに気づかない。
海から吹き寄せる風も気持ちが良かった。
いつも人々の視線にかこまれ、心安まることがほとんどないアイドルの暮らしは、いつしかヨハンの心に暗い影を落としていた。
そんなヨハンのささやかな希望はやはりマイケルだった。
ヨハンは無名時代に合宿所でマイケルと共に過ごした日々のように、また一緒に楽しく暮らせる日がくることをいつも望んでいた。
ヨハンはときどき、気になる美術展があるときは、美術館へ足を運んだ。
絵に興味を持ったきっかけは、「アクエリアス」を脱退し、今はソロ・シンガーとして活躍するマイケルのブログで、絵を描くマイケルの姿を見たことだった。
マイケルは病院に入院していたころ、治療の一環として絵を描き始めたのだが、ヨハンはそのことを知らなかった。
今はもう会えなくなってしまったマイケルと、なぜだか絵を描くことによって同化できるような気がして、ヨハンは絵を描き始めた。
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