第11話 成長できない主人公

「セイラね、プリちゃんと一緒にアイドルやりたい。一緒に歌える日まで頑張ってね」

 「お、おう」

 いかにも仕込みと思われる五歳くらいの女の子の激励だったが、彼は性格的にこういうことを言われるとがんばらなきゃと思ってしまう不幸体質である。

 (それに俺が成長すればムキムキで女装もキモくなるから物理的に続けられなくなる、それまで頑張ろうか。それに彼女が間に合わなければ俺の責任じゃないしな)

 しかし、彼は知らなかった。母親と叔母が、彼の身体的成長を妨げるスキルを毎日毎晩発動させていることを。

 このままでいけば、成長期も第二次性徴も迎えることはなく、身長100センチ体重16キロ4.5頭身の4歳児の平均的な体型が永遠に続く。

 ハーフエルフであるため500年くらいはこの地獄が続くだろう。

 彼の見た目は、頭でっかちの幼児体型、緑色の皮膚とやや尖った耳、整った顔面とさらさらヘアーのまんま四歳児である。

 参考までにゴブリンやオーガの緑色の皮膚は若干の光合成が可能で飢餓に耐えるという。

(それは便利だなって一体何の参考だよ。あ、歌唱と舞踊のスキルが生えてるじゃん。俺は操られてるだけだったのに…)

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