二章
1話:来訪
作者太郎です。
ちょっと意図的にこの作品を見ている方に向けてご報告です!
(別作品を読んでいる方)
近い内に書きたくて色々吹っ飛ばして過去編の一部を投稿しようと思っています!
一応知らない人にとってはバチバチのネタバレ感満載なので、ある程度昔の内容を頭に入ってる人向けでございます。
それでもいいよって方は是非!
以上二章に伴う報告でございました!
「煌星さん?」
「は、はい⋯⋯友梨さん」
現在、俺は土下座に近い姿勢で友梨さんに怒られている。
理由は分かるだろ?
「こんなにピザを食べるなんて、何があったんですか!? 大丈夫ですか!?」
ガチ心配している友梨さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
結局10枚全てを平げ、俺は隠そうとベランダに持っていったのだが、洗濯し終わった友梨さんに見つかって現在、こんな状態だ。
「このピザどうしたんですか?」
「なんか、付箋と共に、これ食べてくださいって⋯⋯」
「そんな分からないメッセージで食べたんですか!?」
「はい、ごめんなさい」
「もしかして⋯⋯前からも似たようなことが?」
俺はここぞとばかりに頷く。
こうしておけば俺の話が上手く進むはずだ。
「本当はステータス食病だったと?」
「あまり知らなくて、調べたらそうだったんです」
「まぁ確かに⋯⋯スキルも優れたものをお持ちになっているわけですし、そう言われたらそうですね」
やったー! 言い訳が通じた!
「心配しますから、お願いしますよ?」
やばい、ウルウルしないで。
⋯⋯可愛いから。
「ごっ、ごめんなさい! そんなつもりは!」
そんなやり取りを始めて約30分程。
俺の家にチャイムが鳴る。
「はーい」
「やぁ!」
扉を開けた先には、五香さんが元気よく挨拶と手土産的なのを持って立っていた。
「あ、どうぞどうぞ」
「すまないねぇ、流石にここで会話するわけにはいかないから、中にお邪魔するよ」
「三神さんが綺麗にしてくださっているので、かなり片付いていますよ」
キッチンまで入ると、友梨さんがパジャマ姿で動画を見ている。
どうやら普段の姿を見ているせいか、いつもとは違ったその姿を見て⋯⋯五香さんは真剣な表情が崩れ、腹がよじれるまで爆笑し始めた。
「プッハハハハハ! え? 黄河友梨さん?」
「ぎ、ギルド長!」
「ごめんねぇ、ちょっと色々話し合い事もあって、中で話させてもらうよ?」
そんなカオス状態の中、キッチンで大人3人、楽しく話とやらを始めた。
まとめとして、具体的な話は次の通りだ。
・現在、全国のクラン団体が俺と面会させて欲しいという依頼が来ていること
・五香さん完全監修の元、今後のダンジョン成果物はこの八王子支部で取引してくれないか?という話
・そろそろ家引っ越さないか?という話
・TV出演の依頼と、オンライン出演の検討
などが主な話し合いとなった。
「まぁ煌星くんの性格上、面会とかが一番嫌なのかなーなんて思ったんだけど、ごめん⋯⋯面会だけは頼む!」
えー、まじかよ。
一番断りたいのに。
「やっぱりクランの立場とかそういう話ですかね?」
「そうなんだ、どうしても今の立場上、お願いする立場なんだけど、駄目かな? ほら、まだ外に出れていなかったら結構アレじゃない? 隣に美女もいることだし」
五香はここぞとばかり性欲を煽る。
「へっ!? あ、えーと⋯⋯」
友梨さんがいる前でなんてこと言うんだ! と内心思っていたんだが、意外にも友梨さんの反応は普通だった。
「まぁ盛んな年頃ですし、高まるのは必然だと思いますね」
「あれだったらしっかり奢るし、ご飯も奢るからぁ!」
もはや何でもいいから受けてくれという五香の縋る表情が可哀想でならない。
「わ、わかりましたよ⋯⋯別に女性はいいですから、食糧の配給と今後における様々な対応をしてくださればそれでいいですから」
「本当かい!? 殺されるところだったんだよ! ありがとう!」
いつもの信頼感のあるギルドの長がまるで子犬じゃ⋯⋯俺も生きた心地がしない。
──だけど。
「ごめんなさい、今の話で聞きたいことがあります」
「なんだい?」
「仮にも五香さんはS級冒険者な訳ですよね?」
「そうだね」
「死ぬってそんなにやばい奴らがいるんですか?」
だってそうだろう?
一般人の話を聞いていれば、S級冒険者なんてそうそう傷やダメージ、ましてや⋯⋯死人だなんて出るのか?
「出るよ、煌星くんはその辺のところを詳しく知らないみたいだね」
⋯⋯?
俺は思わず首を傾げる。
「まずは説明するところかな」
そう言うと、五香さんはマジックバックから教材の一つを取り出し、キッチンの壁に貼り付けた。
「まず、クランだけども、ざっくり世で最も知られているクランの事を四大クランと呼ばれているのは知っている?」
「はい、大亜クランですよね?」
「そう、四大クランには主に、総合力重視で集められた大亜、魔法は最小限に抑え、物理で戦おうとする
個人的には大亜が一番危なくて、その次にユリウスの連中、ウォリアーとウィザードは⋯⋯小学生の集まりってところかな?」
うわー、絶対その2つは関わりたくねぇ⋯⋯。会ったら魔法と力のどちらもカスだとか言いかねない。
「なんか、全てがだるそうですね」
「うん、実質全部だるいってのは事実なんだけどねぇ⋯⋯と、それでね?」
「はい」
「クランは大規模グループなわけ、そこのクランリーダーなんてSSだったりするのよ」
⋯⋯あぁ、なるほど。
「SSにたかがS級冒険者が叶うかというと──万に一つもない」
至って普通という五香さんの表情を見るに、マジなんだろう。
「にしても四大クランもだるいんでしょうね」
「そうだねぇ⋯⋯」
返事を返す五香さんは、何処か懐疑的な目線で俺を見つめた。
「どうしたんですか?」
「やっぱりあまりにも知らなさ過ぎるんだよねぇ。そう言えるのって、ほとんどが実力者たちが言うことで、大半の人は将来が約束されていることが確約されているようなものだから本来喜ぶところのはずなのに、あまりにも煌星くんは現実的に見すぎているというかなんというか」
「まぁゲームばっかしてたんで、ほとんど世間の常識なんてないですよ」
「そう? 変なところは知ってて、それ以外はほとんど知らない事ばかりじゃない?」
なんか探偵みたいな目つきになってるんだけど五香さん。
って言っても、本当に俺は知らないだけなんだけどなぁ。
「まぁある意味大物の発言と思えば相殺されるんだけどね」
「そう思って頂けると嬉しいですね」
「まぁ煌星くんはいい子なのは三神を見ていれば分かるよ」
「⋯⋯え?」
どういうこと? 何が?
「だって、三神⋯⋯職場じゃこんな抜けてないし、何より⋯⋯おと──」
「ぎゃぁぁぁぁ!! やめてください!!」
五香さんが何かを言いかけたときに、般若のオーラ沸き上がらせながら五香さんの口を塞ぐ。
「煌星は何も聞いてないよね!?」
「う、うん⋯⋯」
「はあらしてよ(離してよー)」
「もう! やめてくださいよ!」
そう言って口から手を離す友梨さん。
「そう、とにかく⋯⋯三神の反応を見ていればどれだけ君が良い子なのかがわかるというわけだ! 三神も罪な女だよ⋯⋯。そんな大胆な服装で何もするなって言うんだから」
「うわ、やめてくださいよ。五香さんがオスなんて勘弁です」
「ほら、通常の三神はコレだから」
どう考えてもセクハラしているだけでは?
「まぁその話はいっか。ひとまず色々話したんだけど、面会は近い内に起きるから⋯⋯ちょっと色々腹を決めてもらう形にはなると思う。それから取引の方はどう?」
「構わないですが、それを取り決める理由ってあったりするんですか?」
「ある。まさにクランとかが筆頭だね。移籍だったり、他の形態を使って君をどうにかしたいと思っているところがほとんどだから。まぁ、ほとんどのところが君が他にも何かを持っていると踏んでいる所があるだろうね」
それは俺でもそう思う。
しかも、想定よりヤバイモノを手に入れたということを先日知ったところですから。
『壊れた剣とかなんとか』。
「納得しました、詳しい契約書などは別日にお願いします」
「うん、そんで引っ越しはどう? 一応一通り話したけど、このアパートも特別悪いってわけではないのは前提なのは勿論なんだけど、もっと良いところに移動しないと⋯⋯色々危ないと思うんだけども」
それはそうか。
でも今の所必要はなさそうだけど⋯⋯。
「どうしたの? 煌星」
自分の目線は友梨さんに向いていた。
友梨さんが可哀想だよな。
⋯⋯今だってそうだ。
間取りは1DK。
飯を食う場所はキッチンの手前の狭い空間。
寝る場所も奥のゲームするところで1mもない距離感で現状寝ている訳だし、友梨さん的には結構あれだよな。
⋯⋯男とこんな狭い距離だとあれよな。
「引っ越しとなると、どの辺になりますか?」
「ギルドに近い方がいいだろうし、駅チカのタワマンになるかな」
「タワマン!?」
ギルド近くは高級住宅地としてずっとうなぎ登りで高騰し続けているっていうあの!?
「おぉ、好きなの? 目立ちたくないのに!?」
⋯⋯しまった。
「あっ、いや、なんかいいなぁと思ってて⋯⋯」
「住みたいんだね、煌星くんは隠すのが非常に下手くそなんだね」
失礼な! なんて言いたかったけど、何も言い返せない現実。
「はい、変なところは目立ちたいんです!」
これが夢のひとつ!
タワマンで優雅に出前を頼むこと!
「そう、じゃあギルドから枠を頼むでそこに引っ越しで構わないかい?」
「はっ、はい!」
ギルドってそこまで権力があったのか⋯⋯。
それから日常会話を挟み、五香さんは帰ることになった。
「じゃあ、またまた詳しい日程が決まったら、連絡するね!」
「はい、今日はわざわざありがとうございます!」
「礼儀正しいねぇ、それじゃ!」
俺も遂に──タワマンデビューなのかと心をざわつかせながら、五香さんを送ったのだった。
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