38話:ストア

 それから夜、友梨さんが寝たあとに、俺はまたストアを開いていた。

 ⋯⋯とは言ってもまだ最初の画面のままなんだけどね。


 んー、やっぱり気になるんだよな。


 あまりにも不明な点が多すぎるというのとあのダンジョンの報酬がコレだけということを考えると、そんな事なさそうな気がするんだよな。


 調べた感じ、ユニークダンジョンに潜った奴らは例外なくチートを手にしているケースが多い。


 例えば、アメリカの細かいところまではあれだけども、アメリカではかなり有名な冒険者ジョージ・ミューラーという男は職業という形で拳聖を与えられたらしい。

 結果どうなったかっというと、一回のスキルを発動しただけで地面にクレーターバリの穴をあける事ができるようになり、しかも一撃必殺だけではなくて連続で打てたり、『超人』とまで呼ばれる新たな人種になりつつあると記事には書かれている。


 他にもダンジョンモンスターをテイムできる様なテイマーを与えられたケース。

 後は魔力とは違って呪力や精霊などのファンタジー要素バチバチの能力を手に入れた者もいるらしい。


 まぁ正直言って、公表されている情報自体、十家門のような高度な血統の家柄や金持ちの家に起こりがちだ。

 ある意味、本当に世界を揺るがすようなヤバイ能力を持つ奴は⋯⋯表に出てこないということだろう。


「⋯⋯⋯⋯」


 スマホで調べるたび、俺はユニークダンジョンを攻略したトンデモ有名人になったわけで。

 あまりにも色々知らなすぎた俺は、少しずつこの世間の騒がしさに重さが付いてくるの感じつつあった。


 まぁ別に外に出ないのはいいんだけど、こんなに騒がれるとちょっと困るよな。


 んし、調べるのはここまでして、とりあえず販売ページでも見てみるか。


 ポチッと押してみる。

 するとページが動き、現れたのは⋯⋯オンラインショップさながらの大量に並べられている商品とカテゴリマーク。


 いや、普段使っている冒フルなんかとあまり変わらない気がするんだけど。


 ──ただ、商品名と売っている名前が少々オカシイことに気付くのはその直後だった。


「⋯⋯ん?」


 俺は開いた1ページの一つ目が気になった。


 ───

 [壊れかけのショートソード]

 使用レベル1〜

 特性:なし

 ・壊れかけのショートソード。1階で使うなら間違いなしの逸品!

 入手難易度S

 ───


 なんだこの装備の弱さは。

 本当にユニークダンジョンの報酬なのか?

 いや、そもそもステータスを数値化できるなんて十分凄いじゃないか。


 でも、どうだろう?これは凄いと言えるんだろうか?


 今あるコインは100。

 そして丁度この剣も100。


 ピロン。


 [壊れかけのショートソードを購入しました]

 [初めてストアで購入!を達成しました!]


 ⋯⋯ん?ゲームのミッションじゃないんだから。


 [購入した量や質でVIPを獲得するチャンス!是非この機会に様々な試練を達成し、コインをゲットしちゃいましょう!!]


 だから、このコインの主な入手法である試練が何なのかが分からんのやって。


 ⋯⋯と、嘆いたのだが。


 「ん?」


 よくよく見ると、販売者の名前が履歴から見ることができた。⋯⋯覗いてみるか。


 おおっ。

 思わず声が漏れそうになるほどの販売量だった。

 というか、最初の100ページ分──全部俺が買った『壊れかけのショートソード』やん。


 期待はずれもいいところ⋯⋯。

 なんて言っていたのも鼻で息を吸うくらいの時間しかなかった。


 なんだこれ?


 100ページ分念の為確認し終えた俺の目に映ったのは、見たこともない武器とありえない高評価の量だった。


 詳細を見てみよう。


 ───

 高評価100000,気になる16000000

 購入価格:四百万GC

 [☆4アビサル・ヒューリー]

 使用レベル31

 装備時:筋力+17(45),敏捷+40

 特性:水に対する耐性を50%上げる。

(職人の効果で追加で50%追加付与)

 入手難易度SS

 ───

 

 なんだこれ?あの騎士から貰った奴より高性能な武器だ。しかもGCコインも価格もとんでもないな。


 ⋯⋯すげぇ価格だ。

 今の俺じゃあ絶対に買えない金額。

 

 どうやらこのストアにはイイね機能があったんでイイねしておいて後で見れるようにする。


 それから俺は大量にも近い様々な商品ページを眺めた。


 ⋯⋯それから分かったことは、このストアを利用している連中はイカれているくらいの強者ばかりだということだった。


 例えば、当たり前のように安価でポーションが販売されていたり、こちらでは高価とされるものが100円くらいの感覚で買えそうなコイン消費量である。

 中でも俺の目が輝いたのは、『マナポーション』と呼ばれる物。


 効果は価格にも依存すると書かれているが、永久的に体内に宿るマナの上限を上げることができる。


 つまり、才能なんか関係なしにマナの上限を上げられるということだ。

 これがとんでもないということが俺にも分かる。

 

 これはゲームで例えるのが最もわかりやすいだろう。

 レベルマックスのプレイヤーにまだ上げられますよと言っているようなものだ。

 

 大金出してでも欲しい一品だろう。

 しかしこのストアでは当たり前のようにこのマナポーションが売っている。


 驚きはそれだけではない。

 マナポーションがあるのなら、他にもあるということだ。


「これ、ヤバイんじゃね?」


 そう、スキルも販売されていたり、ダンジョンが販売されていたりもしているのだ。


 とんでもないことだ。ダンジョンの一つで死人が出るような現代世界では、この力は神に等しい。


 ⋯⋯まぁコインもそれ相応のようだが。


 ひとまず、2時間ほど駆け回って良かった。

 報酬がコレなのが最初は理解できなかったが、コレがエグい能力なのも納得だ。


 とりあえずコインを稼ぐ方法を考えないとなぁ。

 でも、今は隣でぐーすか寝息を立てている俺の彼女⋯⋯じゃない、半分同居人の友梨さんと美味しい物でもまた食べに行きたいなー。

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