9話:ひとまず検証してみました
もう何度目かの次の日。
俺は朝からキッチンで飯を食いながらある物を調べていた。
「んー、この冒フルってサイト凄いな」
⋯⋯冒フル。
通称冒険者フルトランザクションページで冒フル。
英語が大半を占めているのは、アメリカ辺りが制作したっぽいからだ。
フィルタリングを掛けることができて、英語ができる奴は世界ページに飛ぶ事ができ、それ以外のやつは自国フィルタリングを掛ければその国の中で取引可能だ。
まぁ世界交流が目的の冒フルは許可制で、フィルタリングを掛けていても送る事はできる。あくまで任意ってところだ。
「ギルドの武器と冒フルのページの量が違いすぎるな」
ギルドに比べると冒フルに掲載されている武器の量が体感3倍以上はある気がする。
「カテゴリもあるのか」
サイトの右上にある絞り込みで並び順を変えると、面白い物が次々と出てくる。
「⋯⋯マジでゲームみたいだな」
映り込んでくるのは、強化済みの武器やエンチャントといった魔法で性能強化した武器がズラッと目に映り込んでくる。
「これは⋯⋯火属性が付与されている剣か。こっちは既存の剣の強さの値を上昇させた剣、凄いな、世の中にはこんな凄い生産職が居たのか」
ソシャゲでもいたな⋯⋯。
とんでも装備を平気で作って周りを無自覚に驚かせる奴らが。
「それにしても、俺はよくこんな未知の世界を知らずにソシャゲしかやってこなかったもんだ」
まぁ今となっては──俺は生産職になる必要はない。
左手に意識を集中させ、俺は昨日と同じ1g金貨を生成する。
「こんな馬鹿げた能力が現実にあるなんて⋯⋯異世界の奴らはどんな暮らしをしてるんだか。それとも異世界の奴らってのはみんなこう大富豪な奴らなのか?」
俺は未だに自分の能力が信じられず、冒フルで詳しいスキルや職業についての情報を洗い始めていた。
「やっぱりどこのサイトを見に行っても答えは同じっぽいな」
スキルには種類がある。
発現は皆同じであり、取得条件を達成すれば得る事が出来る『共通スキル』。
そして一部でしかみられない『レアスキル』
これにはどうやら認識の差が国ごとでかなりあるらしいが、どうやら一般的には"鑑定"や"看破"などの詳細を視る能力などがレアスキルの代表らしい。
このスキルらはゲームをやっていれば理解できるが、モンスターの情報や武器の情報、レベルが上がれば人物の詳細ステータスすら覗く事ができるらしい。
そして最後にーー『"ユニークスキル"』と呼ばれるジャンルだ。
これはほとんどの人間が実態を知る事はないらしい。
何故ならユニークというだけあって一人だけに与えられた特別なスキルの名称らしく、世界で一人しかいない特別なモノらしい。
国の中でも持つのは数人から20人以内と言われ、代表的な大亜クランに属しているリーダー菅大希という男が持つユニークスキルは『高速演算』という思考速度や魔法なんかの詠唱速度が極端に早くなるスキルというのを公表したとここの記事には書かれている。
世界的に見てもこのユニークスキルは極めて珍しいものの為、見つかり次第国やギルド、現在ではクランたちも動いて引き入れようとするとの事だった。
「俺ヤバくない?」
最後まで読んだ俺が抱いた感想だった。
だって俺⋯⋯金貨出せるんだよ? 下手な事したら資産形成とんでもない量になるぞ?
「はぁ⋯⋯⋯⋯こりゃ問題だぞ?」
まぁまずこの力は隠さなければならない。
それは大前提。
俺は、まだこの力の全容すら把握出来ていない。しかもまだレベル2、今後どんな力が目覚めるのかすら不明だ。
今はとりあえずこの力がどこまで発揮出来るのかを考えなければならない。
「そしたらこういうのは急げって言うしな、色々確かめるか」
そうして俺の検証タイムが始まった。
結果から話すと、回数は今の所無制限に近いということが分かった。
出しても出しても魔力やそういう力が無くなるような感覚は訪れず、永遠に生成できる事が分かった。
次に一度に生成できる限界についてだ。
生成量が1レベルで上がったからなのか、一先ず俺が始めたのはネットで出てくる3gの金貨を参考にして生成を始めてみた。
結果、今の所調べると十分の一Oz、最大で3g程の金貨まで生成できることが分かった。こちらに関しても生成回数に制限が無く、値段を調べたら1枚辺り2万円程する事がわかり、俺の頭の中はヒートパンクした。
直径16ミリ、そして重量3gが⋯⋯俺の出せる限界地点となった事がここで分かった。
最初は金貨を売る事を考えたが、あまり頻発し過ぎると色々アレかと思い、もう少し間隔を空けてする事にした。
ある程度の金はある事だし、冒険者活動を続けるつもりでもあるため⋯⋯レベルが上がったことも考慮しての答えだ。
「とりあえずこの現金は生活費に充てよう」
そしたら、ギルドへ向かって初心者ダンジョンでもう少しレベル上げてから色々活動範囲を広げるとするか。
「これから講義だけど、どうしようかな⋯⋯」
今は正直、大学の授業どころではない。
今後何十年の進路が変わるかもしれない大事な時間真っ最中なのだ。
少し前までは大学の講義は非常に大切なものだったが、今は違う。
こっちは人生そのものを変えてしまうほどの⋯⋯強力かつ──危険を孕む異常なスキルであることは間違いない。
死の危険よりまずい可能性があるからだ。
最悪死ぬ寸前まで生成し続けるとかいう恐怖体験をせねばならないかもしれない。
「まぁ、でも、念の為出席した方がいいよなぁー」
結局俺は諦めて講義を受けに行く事にした。
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