5話:初心者ダンジョン
それからというもの、俺は大学の講義を受け、バイトこなすといういつも通りの日々を送る。
⋯⋯変わったといえば一つ。
「冒険者として活動していくためには結構金要りそうだなー」
スマホでググって冒険者関連の最新情報や初心者に必要そうな情報をピックアップして、一つずつ読んで頭に叩き込むことだった。
まぁ、あのよく分かんない黄金君は置いておいて、店長に全部ではないがスキルを話したところ、かなり好反応だった。
どうやらスキルレベルはかなり重要かつ、レベルによってその人がどれだけヤバイのかが分かるらしい。
ちなみに俺が持っている極真空手は7な訳だが、最初から5以上の奴は天才と呼ばれるようなレベルらしいのだ。
スキルを得ても、スキルレベル(熟練度)はそう簡単に伸びないらしい。だから新しくスキルを覚えたとしても、ちょっとしか使えない超器用貧乏以下みたいな事になりやすいとの事だ。
実際スキルレベル5以上の奴はグッと狭くなるらしい。
実際スレでも尋ねたところ、店長と同じ反応だった。
「スキルを覚えるのは後でいい」だの、「変に覚えるな」とも言われ、俺はみんなの経験を信じて、今はスキルを覚える事よりも、冒険者に必要な知識を得ようとこうしてスマホでググって一丁前に勉強しているのだ。
はぁ、こんなんじゃ⋯⋯冒険者の光が一層輝いてしまう。
⋯⋯どうなんだろうか。
俺はこのままでいいんだろうか?
まぁ、いずれにしろ、このステータスでも活動するなら問題ないようなので、俺は一先ず挑戦してみようと思う。
とりあえず就活が始まる6月前までを期限として、もし活動できなかったとしても、アルバイト感覚で冒険者をやればいい。
幸い一度取得した冒険者ライセンスとステータスカードは、就職している状態でも活動しても良いとのことだ。
⋯⋯副業としてもOK。ならやらない手はない。
そして金曜日の朝9時前、俺は初心者ダンジョンに挑むべくギルドの中へと入っていく。
⋯⋯あれ?
入ると人はあまり居らず、息巻いた気持ちがふっと消えていった。
そしてすぐに何故かに気付く。
あっ、今日は金曜日だからか。
俺はそのまま登録した初心者看板の方へ進み、受付の順番を待つ。
「次の方⋯⋯あっ」
「あっ、こんにちは!」
登録した時のお姉さんだ。
俺はすかさず朝一の挨拶をする。
「あぁ、ご丁寧に。今日はどうされましたか?」
「ええっと」
いいんだよな?ベテランの言葉を信じよう。
「初心者ダンジョンに行きたいのですが⋯⋯合ってます?」
「あぁ、もう知っていたんですね。すぐ行かれますか?」
「あっ⋯⋯忘れてたことがあるのですぐ戻ってきます!」
俺は完全に忘れ物をしていた。
⋯⋯武器を買ってない。
「武器や防具は2階にありますよー!」
「ありがとうございますっ!」
お姉さんは俺の状態を察したのか、丁寧に指を指してくれた。
**
「すみません、お願いしてもいいですか?」
「はい、では私に着いてきてください」
お姉さんに着いていくと、気付けば横30m,高さ10m程の変な扉の前に立っていた。
「これが⋯⋯ゲートですか?」
「はい、これは特殊なゲートでして、ダンジョンとゲートは全くの別物です。ゲートは全国各地のモノと一緒であり、この中に入ると黄河さんと同じような初心者が沢山いらっしゃます」
「へぇ⋯⋯なるほど」
「おそらく初日だと思いますので、深いところまで行かないようにしてくださいね」
「了解しました!」
お姉さんが何かを弄るとゲートの空間が歪み、視界の先は真っ暗。
「これ、変なところにワープしたりみたいな事はないですよね?」
「大丈夫です!皆さんこうですから」
お姉さんを信じよう。
変なフラグを立てても仕方がない。
「それじゃ、行ってきます!」
「お気をつけてくださいね!」
俺は勇気を出して真っ暗なゲートへと入って行った。
「⋯⋯ん?」
ゆっくり目を開けると、一面草原だった。
あるのは中央に石張りの道が何処までも先に続くのみ。
左右を見ても、草原しかない。
「すげぇな、こんな事なら早く冒険者に挑戦すれば良かったな」
ソシャゲがリアルになったみたいだ。
まさに始まりのステージって感じ。
「とりあえず深い所に行かないにしても、体の感覚はどうなんだろ?」
その場で屈伸をしたり腰を曲げたりしながら自分の身体に何かしらの変化が起こっていないかを確かめる。
「問題ないなさそうだな、むしろ体が軽い」
それに疲労感が消えている気がする。
昨日はかなり徹夜漬けだったからかなり眠かったはずなんだがな⋯⋯。
※冒険前はしっかり寝ておきましょう
「ここで貰ったパンフレットを開こっと」
リュックから取り出した資料を広げ、俺は必要事項を再度確かめる。
「えー、この初心者ダンジョンは、主にスライムとゴブリンがでる。後はここで主に採られているアイテムは普通の薬草と、極小魔石と呼ばれるモノだな。まぁ、初心者ダンジョンな訳だからこんなモノか」
売値は⋯⋯流石にそっちはググった方が早いだろうけど。 まぁ期待はしていないがスマホを点けると「圏外」になっていた。
「だよな」
とりあえず最初の5レベくらいまでは割と早いらしいから、ちゃちゃっと戦ってみよう。
「あ、手に持っとかないとな」
俺はリュックに刺しっぱの安い鉄の槍(9万円)を手に取り、俺はこの初心者ダンジョンを進み始めたのだった。
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