サッカーor卓球 究極の2択君はどちらを選ぶ?

「え、知ってたんですか?!」


 イベント終了後アプリコットとリアルで同じ学校それも同じクラスだったことを話した。


「ごめんなさいねぇ?アプリコットちゃんの様子がおかしかったからちょっと話を聞いて相談に乗っていたのよぉ」


「あーだから言うても、すぐ打ち明けてきたのか。あっ」


「お?あァ大丈夫だぜ?そこらへんは全部話してあるからなァ」


 あ、そうなんだ。そこらへんは無駄に男前ですね。普通は自分の弱さなんてそうそう簡単に打ち明けられないけどな。まぁ、そこはハニーさんの人柄もあるか。おねぇだけど何故か信頼できるし。


「いやぁいまだに信じられないわ、アプリコットが女子だったとはな?」


「分かりやすかったですわ!多分気が付いていないのはソーダくらいですわよ?」


 そうかもなとは思った事あるけど、今どき化粧ぐらい男もしてるし、男らしさとか女らしさなんてものの境界線は薄くなってるし……何より話し合いすぎて男友達と話してる感覚だったし。


「……リアルも所詮仮初。むしろここがリアル」


「サトウちゃん、リアルも頑張りなさい?リアルがあってこそのゲームよぉ?もちろん、耐えられなかったときはわたしに相談してくれてもいいのよぉ?」


 廃人なのにリアルを捨ててないハニーさんが珍しいと思うけどな。ネトゲの強さはリアルと反比例する。たまに例外もあるが……それこそがハニーさん。いわゆる課金厨。


「羨ましいですわ!早く私も青春したいですわ!」


「早くっつってもよォ、セントレアも高校生だろ?」


「そうですわね、おーっほっほ!」


「その高笑いリアルでしてねぇよな?」


「わたくしはわたくしですわ!」


 ダメじゃん。それじゃん。それが原因じゃん。リアル高笑いする人とリアルで友達になれる人はそう多くないぞ?


「そういやもうすぐ球技祭だろ?しぃ、アプリコットって運動できるの?」


「……人並みだぜ、人並みなんだぜ」


「……ダメそう」


「うぐっ、だってよォ?話したこともない人と連携取れって言われてもよ、出来るわけねェだろ。縛りプレイしつつ野良パ入るようなもんだぜ」


「でも、こないだ初心者抱えて野良パで3時間かけてクリアしたとか言ってなかったか?」


「あらァよ、周りの野良も「勝つまでやろう」とかやる気があった上に、何回でも試行錯誤出来るから成し遂げられたことよ」


「……リアルは一度失敗したら終わりのハードコアモード」


 全ロスまではしないだろ。え、しないよね?


 一度選んだ道は変えられないそれが例え成功でも失敗でも。





 ~~~~~~





「一週間後に球技祭が迫ってきました。なので!チーム分けを行いたいと思います!」


「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉおお!」」」」」


「え、ちょっとどうして皆そんなやる気なの?!私体育祭でもないしそこまで盛り上がるかなぁってちょっと不安だったのに……」


 先生、遅れてますね。皆八重さんと、八重さんと……た、高何とかさん2人の美女を抱えてるA組男子にヘイトをためているんですよ。


「気合いがあるのは良いことよね、それじゃあ早速チームわけなのだけれど、女子はバスケとドッジボール、男子はサッカーと卓球に分かれてもらいます。じゃあ後は委員長、飯野君に任せるわね?」


「了解しましたクイッ。それでは女子から決めましょう。個人的にバスケットボール経験者はバスケットボールにして欲しい所ですが、好きな方を選んでもらっても構いませんクイッ。それではバスケットボール志望の方は挙手をクイッ」


 おぉーいい感じに分かれたな。案の定椎名さんはドッジボールと。うん、わかってたよね。運動が得意な女子はバスケに行きがちだ。というか、眼鏡クイッってやつうっとうしいな。動作なはずなのにクイッって音が聞こえてくる。まぁそれはいい。そう、それは本当にどうでもいい。問題は次だ。男子の部だ。


「ありがとうございます。簡単に決まって嬉しい限りですクイッ。次に男子ですが……卓球やりたい方は挙手をクイッ」


 ……


 ……


 ……


 誰も手を上げないか。だよな。サッカーだ、サッカーしか道はない。卓球は悪くないけどこう、なんだろう、チーム戦じゃない分盛り上がりに欠ける。あと、経験者にはどうあがいても勝てないのがきついな。負けイベントを何とかクリアしようとして色々策を講じ、何とか勝ったのに負け扱いになるイベントを前にした時みたいな気分になる。あと、卓球好きごめん。俺も友達とよく卓球して遊びます。楽しいよね卓球。


「……正直わかっていましたが、まさか誰一人として手を上げないとはクイッ。この私をしてもクイッ予測することが出来ませんでした。ですが、私に名案がありますクイッ。個人的には三矢くんを卓球にしてやりたいところですが……今回はサッカーに入れたいと思います」


「反対だ!三矢くんは既にいい思いをしている。ここは卓球にすべきだ」


「えぇ、その気持ちもわかりますクイッ。ですがその感情を利用するのです。サッカーに三矢くんを入れればA組の男子は確実に三矢くんを狙いに来るでしょうクイッ。もしかしたら他のクラスでも同様のことが起るかもしれませんクイッ。三矢くんがいることで他クラスの目的を散らすことが出来ますクイッ」


 なるほど、ラフプレイで俺を削りに来るという目的と試合に勝つという目的と……


 おい、俺は人柱か?


「「「俺らは賛成」」」


 おい、三馬鹿ぁ!


「彩雫オタクのくせにまじうめぇしな」

「それ、センスあんよ」

「でもやっぱすぐバテッけどな?」


 さんばかぁ!おめぇらってやつは!


「ま、サッカーに入れるならいいけど。そんなラフプレイしてこないだろ?」


「うーん、どうだろうね?八重さんとかも見てるし露骨にはしてこないと思うけど、この学校変わってる人多いからなぁ。ほら?今もこの盛り上がり用だし」


「ま、何とかなるか。んで?あとはどうすんの委員長?」


「クックっクッ、サッカー部を入れますクイッ」


「あとは?」


「経験者を……経験者は挙手をクイッ」


 い、いないのか。あれ?体育の授業だと結構みんなうまかったけど。


「で、そのあとは?」


「……クイッ」


「もう名案とやらは終わりか?案外あっけなかったな」


「あっはっは、彩雫それなんか悪役っぽい」


 確かに。序盤で主人公ぼこぼこにしてそのまま去っていく系の敵ねわかるわぁ。って誰が敵じゃい。


「ごほん、少々想定外でしたが、卓球の経験していたという方は挙手をクイッ」


 ……


 ……


 ……


「ありがとうございますクイッ。えー8人クイッ」


 多くない?!……クラスの男子は1、2、えっと16人。半分じゃねぇか!


「え、お前も卓球経験者?」


「うん、え、お前も?」


「なんで把握してないんだよ」


「だってなぁ?卓球部とか目立たないし?そりゃあ隠すに決まってるよね?」


 まぁ確かにな。……えー卓球部の皆さん本当にごめんなさい。


「卓球は5人ですクイッ。よってじゃんけんで負けた5人を申し訳ありませんが卓球にさせていただきますクイッ。これも勝利のためですクイッ。」


 じゃーんけーんぽい


「はい、決まったわね。じゃあ1週間後とあまり時間はないけど普段運動しない子は今のうちに少しだけでも運動する癖をつけておいてね?それじゃあ今日のホームルームは終わりお疲れ様」


 よしよし、いい具合にサッカーを勝ち取った。最近ブルロかよってくらいサッカーばっかりしてる気がするからな、これは活躍するしかあるまい。わざわざ練習したりはしないけど。俺はエゴイストになる!

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