ターラスの魔法学校
昔々、アーブローディの西部に、ターラスという王国がありました。
当時、魔法使いは色々な場所に色々な
王様が大臣たちに相談すると、大臣の1人が進み出て、魔法使いの学校を
「魔法使いの学校とな?」
「そうです。
我が王国には魔法についての様々な知恵や言い伝えがありますが、原始的な自然
魔法使いの多くは
そこで、魔法に関する国中の知恵を結集し、それらの
魔法使いとして出世することを目指す者は
すると、別の大臣が口を
「しかし、愛国教育を
「もちろん、愛国教育も実施しますが、目的はそれだけではありません」
提案者の大臣が答えました。
「入学者には、魔法教育の恩恵を受けさせる代わりに、家族を
家族の
「そんなことをしたら、入学希望者などそもそも集まらないのではありませんか?」
「魔法の才能があるのに入学を希望しない魔法使いは、王様に
かくして、ターラスに初めての魔法学校が設立されました。
王様と大臣たちの
魔法使いたちやその家族が来て首都の人口が増えると、魔法を使わない商人や職人も、新しい仕事や魔法の恩恵などを
しかし、
首都の人口が増えると、衣食住を支えるモノが不足しがちになり、物価が上がります。
すると、節約を
ケガや病気で倒れる人や、その面倒を見なければならない人が増えます。
お金が足りなくなって犯罪行為に
犯罪を
警吏たちはメンツを守るために、犯罪の捜査に必死になり、犯人の特定が難しいと判断するたびに、何かの魔法が使われた可能性、つまり犯人が魔法使いである可能性を疑うようになりました。
犯罪に走る住民たちもまた、自分が
そのため、首都に住む人々は、魔法使い相手に商売をする一方で、魔法使いに不信感を
また、魔法使いたちも、近所で何かあるたびにお役人たちがやってきて、
「
「何もかも正直に話さないと、家族がどうなるか分からないぞ!」
などと
ターラスの王様と大臣たちは
そして、学校で育てた魔法使いたちに、魔法の力で首都の人々の生活を助けるように命じました。
首都の生活が豊かになれば、危険を
この政策は、表面上は上手くいきました。
魔法使いたちは首都の道を
住民たちは魔法使いに感謝しました。
魔法使いの方も、自分の働きが多くの住民に感謝されることを喜びました。
ですが、良い関係は長続きしませんでした。
住民たちは自分たちが
そして、自分が何十年もかけて
魔法使いたちの方も、住民たちの要望が
また、働いても
住民の生活を豊かにするのが目的である以上、住民からお金をとっては本末転倒ですし、王様や大臣たちは魔法学校の運営だけで充分お金を使っているつもりだったので、いつもと同じように、
「命令に
と
首都の住民も魔法使いも、表面上は仲良くしていましたが、内心では不満をため込んでいました。
しかも、問題はそれだけでは
周辺の国々がターラスの真似をして魔法学校を設立し、その上で、ターラス国内の魔法使いを引き抜いて、自分たちの国の学校に入学させるようになったのです。
魔法の研究はまだ始まったばかりで、それはどの国も変わりません。
どの国の王様たちも、魔法使いの育成で他国に
当然、
学校で育てられた魔法使いたちが戦争に
ターラスの王様と大臣たちとしては、そのための魔法学校のつもりでした。
ですが、愛国教育が上手くいっていたのは見せかけだけで、実際のところ、魔法使いたちはちっとも王様たちのことが好きではありませんでした。
入学の条件として家族を
ついに、1人の人物が立ち上がりました。
ターラス魔法学校の教員で、歴代の生徒たちに
彼は元々、魔法学校の卒業生たちの一部が結成した文学愛好会に顔を出して
ですが、同好会が政治活動に手を出す中で、
ターラスが他国と戦争を始めて2年、教え子たちの
嘆願書の内容は、魔法使いの
この嘆願書では、魔法使いの家族を解放することは要求されていませんでしたが、魔法使いによる評議会の設立など
そして、評議会が魔法使いの
しかも、今は戦争中。
王国に
勇敢な教師とその仲間たちは、国家反逆罪に
王様と大臣たちは、二度と魔法使いが嘆願書の提出や署名運動など考えないように、罪人とその家族の処刑をわざわざ民衆の前で
しかし、王様と大臣たちの
そして、魔法使い同士で団結し、王国の都合に合わせず魔法使いの自由と利益を重視する考えを共有するようになりました。
この分断につけ込んで、ターラスの敵対国は、
王国を裏切ってくれたら、魔法使い自身と家族に対して自由で安全な生活を保証するというのです。
魔法使いの多くはそれでも自国やそこで交流を持った人々を愛していましたし、外国や外国人には不信感もあったので、
ですが、一部の魔法使いはこの話に乗り、家族が解放される
強力な味方であるはずの魔法使いが突然裏切るのですから、軍隊が混乱して弱くなるのは当然です。
魔法使いの中に裏切り者が出たという
結局、ターラス王国は戦争に負けて
人質になっていた魔法使いの家族の多くは、王国
しかし、
彼ら彼女らが伝える物語によって、ターラス王国
<ターラスの魔法学校、完>
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