道子はその顔を真っ赤にしていた。

(自分ではわからなかったけど、おそらく自分の顔も鏡でも見ているように、きっと道子と同じように真っ赤になっているのだろう、と小唄は思った)

「……私、ずっと前から白川くんのことが好きだったんだ」

 顔を真っ赤にしながらにっこりと笑って道子は言った。

 道子の手は小さく震えていた。

 小唄はなんて言っていいのかわからずに、思わず道子から視線を動かして、立派な松の木のある雨降りの庭を見た。

 それから、少しして視線を居間の中に戻して、柱時計を見て、それから道子のことをもう一度見た。

 道子はそこにいて、さっきとまったく変わらない様子で、まっすぐな目を見て、小唄のことをじっと見つめていた。

「白川くん。白川くんの答えを聞かせて」と道子は言った。

 答えとはもちろん、さっきの道子の将来の夢の試験の答えではなくて、今、この場で行われている突然の(まるでさっきの雨のような)道子の小唄に対する恋の告白に対する答えだった。

 小唄は道子に向かって「……僕は」と自分の道子の恋の告白に対する自分の正直な気持ちの答えを言った。

 すると道子は静かにその目から、美しいとても綺麗な涙を一粒だけ、本当に自然に、……流した。

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