いと愛しき君たちへ~前日譚:不揃いな式盤~

おおよそもやし

荒天。頭上には暗雲が立ち込めて、雷が轟き続けている。石畳を打ち付ける冷たい雨の中で、私は呆然と立ち尽くしながら一人考えた。

どうして、こんな結末になってしまったのかな。ただ、一緒にいたかっただけのはずなのに。

ふと、足下に目を向けると点々と続く血の跡が目に入った。これは誰の傷だったっけ。

罪悪感と恐怖に苛まれ、ぺたりとその場に私は座り込んだ。

私の大切な人達が死んでしまった。弱ければ死なずに済んだのに。戦わずに済んだのに、と今更な後悔が頭をよぎる。


いつも一緒だった。いつだって支えてくれた。私の、大好きな仲間たち。

大事だったのに、何もできなかった。

その中でも最も耐えられないのが、大事な片割れも最愛の人もいなくなってしまったこと。結局、私と兄さんの二人だけではには勝てなかった。だから、結局___。


厄災は封じ込めた。兄さんが犠牲になって。この結界が壊れない限り、もう高位の怪異が現れることもないだろう。けど、もう守りたかった人達には二度と会えないのに、これからどうして生きていけるのだろう。ひとりぼっちじゃ、私は何もできないのに?



私は異形と化した腕を、その鋭い爪を、自分の首筋へ突き立てた。


どうか、もう。

目覚めて。これは、悪い夢なんだから___。

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