乙女ゲーム世界に転生したので、満喫するべく好きに行動します
仲仁へび(旧:離久)
第1話
とある少女は乙女ゲームの世界へ転生した。
ベッドの上で目を開けた瞬間、怒涛の様に子供の頭へ記憶が流れ込む。
「朝起きたら、前世の記憶があった件について! びっくりしたのだわ!」
その少女は十歳頃の時に、前世の記憶を思い出した。
「しかも好きだった乙女ゲームの世界だなんて! 感激なのだわ!」
少女はベッドの上で飛び放得る。
転生先は知っている世界だったからだ。
しかも、少女が好きな乙女ゲームの世界。
かなりやりこんでいて、内容は熟知していた。
だから少女は感激して、自らが住んでいる貴族屋敷を半日ほど走り回り、使用人や家族から頭の様子を心配される事になった。
「とりあえずこの世界を満喫するために、知っている事をメモするのだわ」
少女はメモを始めた。
前世の記憶を忘れないうちにと、少女が持っている可愛らしいノートに羽ペンを走らせる。
前世で使っていた言語で、細かくゲーム内容をかきとめた。
しかし、少女は変わっているが、気遣いの忘れない人間だった。
「うっかり誰かが見てしまって、未来の事を知ってしまったら、どんな事になるのか分からないのだわ!」
未来を知る事は、人間にとっていい事だとは限らない。
そう思った少女は、そのノートに「見たら三日後に死ぬノート」と書いておく事にした。
そして、怖そうに作ったお札っぽい神を表紙にべたべたと貼り付けた。
掃除のメイドがそれを目撃したが、少女の目論見通り、中身に目を通す事はなかった。
前世でやっていたゲームの世界なので、少女はこの世界の事にだいたい詳しい。
そのため、妙な事をやっている変な子として見られながら、その少女は育ってきた。
「○○村で土砂災害が発生するのだわ! 早くいって通行止めにしなくては!」
「××平原で魔物の大量発生が起こるのだわ! 強い冒険者を集めておかなくては!」
「どこかのモブが浮気しそうになっているのだわ! 設定資料にのる程度の存在だけど一応止めにいっておきましょ!」
けれど、
人助けをしたり、災害を言い当てたりするため、悪い子ではないというのが周囲の認識だった。
「どうにも扱いに困る子だけど悪い子ではないのよね」
「そうだな。どうにも何を考えているのか分からないが、良い子である事は間違いない」
家族ですら扱いには困っていたが、悪い子ではないし、誰かを困らせる事はなかったので、皆その少女をそのままにしておいた。
すくすくと育ったそんな少女は、乙女ゲームの世界を満喫。
数年後、原作の舞台である学園へ入学した。
「とうとうやってきたのだわ! 原作が始まるこの場所へと!」
少女はわくわく、どきどきしながら、積極的に登場人物へとからんでいく。
登場人物の傍でイベントを見守り、乙女ゲームの世界を満喫する少女はとても幸せだった。
「はぁー、素敵なのだわ! 攻略対象がヒロインの手をとって、デートに誘うシーン。ロマンチックなのだわ!」
「ほえー、さすがなのだわ! 博識な攻略対象が知識を使ってヒロインの窮地を救う! 思わず目を奪われてしまうのだわ!」
「にょへー。美味しすぎるのだわ! 攻略対象の料理スキルでほっぺが落ちてしまいそう! (男だけど)お嫁さんにしたいくらいなのだわ!」
それだけでなく、町中を歩いてゲームの名所を観光してまわったり、ゲームイベントでゲッドするアイテムと同じ物を買ってショッピングを楽しんだりした。
「とても幸せなのだわ!すりすり」
そんな少女はいつでも幸せそうだった。
だが、やはり周りから見ると変わった子だった。
「あの子、どうして銅像なんかにすりよっているのかしら」
「しっ、目を合わせちゃだめよ。早く行きましょう」
「ここで告白イベントが起きるのだわ! その前にちょっと重要名所にある銅像の触り後心地を堪能しておきましょ! すりすりなのだわ!」
乙女ゲーム世界に転生したので、満喫するべく好きに行動します 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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